第13章 新世界を一人で生き抜いた女
だが、今は悔やんでる場合ではない。
仲間殺しは白ひげ海賊団唯一のタブーだ。
「船内、くまなく探せよい」
「マルコ!小船が一隻ないわ!」
そこへ響いた沙羅の声に、ライの体にとりあえずシーツをかけ、一同は甲板に向かった。
非常用の小船が確かに一隻ない。
残っているのは小船をモビーディック号に結んでいたロープのみ。その切れ端は鋭利な刃物で切られ、赤く染まっていた。
ライの血に違いない。皆がそう思った。
その時、ふと“誰かが”言った。
「なぁ、あそこに見えるの島じゃねぇか?」
その声に、誰もがその島の方を振り向いた。
確かに遥か前方に小さい島らしき物が見えた。
「あの小船じゃ、遠くにはいけねぇな」
イゾウの言葉に、マルコも頷いた。
「俺が行く」
自隊からでた犯人に責任を取りたいマルコ。
「こういう時は、俺が行くもんだろ」
自隊の隊員の敵を取りたいイゾウ。
結局、二人は譲らず。
上陸したことはおろか、存在すら知られていない未知の島ということもあり、1番隊と16番隊でフェイクを探すことになった。
二つの隊を見送った沙羅は落ち着かない様子で甲板を歩いたり、椅子に座ったりしていた。
16番隊副長の沙羅はもちろん同行するつもりでいた。
だが、今、モビーディックにはサッチにビスタ、そしてハルタしか隊長がいない。
白ひげの命を受けて出ている者、所用で船を離れている者。
様々な要件が重なりモビーディックは手薄だった。
その為、強大な力を持つ沙羅は船に残らざるをえなかった。
でも、“何かがおかしい”そんな気がしてならなかった。
「やっぱり不安?マルコがいないと」
そんな沙羅を案ずるようにサッチが声をかけた。
「サッチ、・・・違うの、何か嫌な感じがして」
「何が?」
そう言われても明確に答えられない沙羅は、それでも口を開かずにはいられなかった。
「上手く進みすぎというか、乗せられているような」
「・・・」
「島もよく見つけたなって・・・あの声誰だったのかなって」
「・・・」
「ごめん、私が感じてるだけだから」
何も言わないサッチに、どうしたらいいかわからず沙羅は話を切った。
そんな沙羅に、実は自分もこの島にきて感じ始めた違和感を伝えようとした時だった。