第13章 新世界を一人で生き抜いた女
そんな彼らを冷たく一瞥しつつ、ハルタが言った。
「本人がいいって言ってんだからいいじゃん」
「あぁ?!」
怒りの矛先を変えたサッチ。
「それに、相手はさせてなくても“おかず”にはしてんじゃないの?」
「!!」
咄嗟にサッチは沙羅を見た。
「あ、いや、沙羅ちゃん、これは、その・・・」
「?」
動揺するサッチと、意味のわかっていない沙羅。
その間にそそくさと逃げ出すクルー達。
「待て!」
呼び止めたサッチを、再度沙羅が制す。
「サッチ!いいの、おかずでも何でもいいから!」
「え?・・・」
ぎょっとした顔で沙羅を見るサッチ。
『“おかず”でも“何でも”いいから・・・』
沙羅の声が、頭の中をぐるぐると回る。
そして、脳内に浮かぶあられもない姿の沙羅。
後ろから繋がって激しく啼かせてみようか?
いや、むしろ縛ってみようか?
『っや、サッチっ・・・』涙目の沙羅が浮かぶ。
「サッチ?」
自分の顔を見たまま、固まってしまったサッチを覗き込むように見上げた沙羅。
「・・・沙羅ちゃん・・・」
その沙羅を見下ろすサッチは、ごくりと喉をならした。
「意味わかって・・・」(ないよね)
見上げる瞳には羞恥も動揺も含まれていない。
ただ、黙ってしまったサッチを不思議そうに見上げるのみ。
そんな二人のやり取りを呆れた顔で見ていたハルタは、『馬鹿じゃないの』と言い残し去っていく。
気まずくなったサッチも今度は呼び止めず、沙羅に向き直った。
「よくあるの?今日みたいな事」
すると沙羅は苦笑いを浮かべて言葉を濁した。
「っあいつら、つ~かハルタの奴!」
どうやらハルタが悪い事になったらしい。
「違うのサッチ、ハルタ隊長とあの人達は別」
慌てて否定する沙羅を疑いつつ、ふと、思い出したように言った。
「あいつは?」
「え?」
「マルコは知ってんの?」
すると沙羅は首を横に振り、『絶対言わないでね』と付け加えた。
可愛い妹にそう言われてしまえば、Noと言えないサッチは『わかったよ』と返事をするしかない。
それに安堵した沙羅は、まだ散らかったままの甲板前方へ向かった。
「・・・で?どうするよ?」
残されたサッチは自分の後ろにある壁に話しかけた。