• テキストサイズ

海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第12章 穏やかな日々


「あ・・・」
小さく声を上げて、目の前の景色に見惚れた。
一面に広がる燃えるように真っ赤な紅葉の木々。
その葉が足下の大地に、川に落ち、秋の陽に照らされてその紅を更に際立たせる。
天高く馬肥ゆる秋という言葉があるが、その澄み切った秋空に映える紅葉の色と川面に微かに映る青空に言葉を失った沙羅。
その様子をマルコは木に寄りかかり、静かに見守った。満足するまで眺めて欲しい、追われることも、急ぐこともないのだから・・・、そんな思いを込めて。

 夢中になって眺めている沙羅の体が時々微かに揺らぐ。
その懐かしい光景にマルコの胸が嬉しくなる。

“安心しきっている”

少女だった頃から豊かな自然に囲まれ、安心すると自然と交流するように海神の力を解放していた沙羅。
再会してからはその光景を目にすることがなく、気になっていたマルコ。
新しい家族との慣れない環境に無意識に緊張していたのだろうか、大人になり、マルコの前で初めて見せたその姿に心が踊った。
そんなマルコを、徐に振り返った沙羅。その表情は明るく、笑顔が溢れていた。
「マルコっ!ありがとう!」
声までも弾ませて言う沙羅に、マルコは顔が緩むのを抑えきれない。
それでも、本来の目的を忘れてはならないと自分に言い聞かせ『沙羅』と名前を読んだ。
溢(コボ)れんばかりの笑顔をそのままに、近づいてきた沙羅はマルコを見上げた。
マルコもまた、初めて会った時から惹かれて止まない瑠璃色の瞳を見つめ返した。
「知ってるか?沙羅、世界にはこんな綺麗な景色がたくさんあるよい」
「?」
「美味ぇ物や、楽しい町、おめぇが好きな物や場所、景色がたくさんある」
マルコの言わんとしていることが分からず、疑問符を浮かべながらも頷く沙羅。
「だから、これからは楽しみにしてろよい」
「マルコ・・・」
その言葉にじわりとした喜びを感じた。
マルコの言葉は続く。
「俺達と“一緒”にたくさん見て、食って、笑うよい」
「!!」
「もうどこにも行くんじゃねぇ、俺の隣にいろ」
「っマルコ」
頬を仄かに赤く染めがらも、しっかりと頷いた沙羅をマルコは愛おしそうに見つめた。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp