第2章 俺は平凡な高校生、隣の奴は…?
ーーダンッ
いきなり凄い音がしたので、俺はボールを持っているのに隣の女子コートを見た。
嘘だろ…初めて見た…まじかよ…
俺は思わず笑いがこぼれてしまった。
今は4限目の体育の時間で、今回は男女分かれてのバスケだった。
それでゲームを行っている最中に優里さんはダンクを決めていた。
ゴールにぶら下がる彼女のすぐそばには、ゴールネットを通ったボールが跳ねている。
女子の黄色い歓声が上がるのを聞いて
改めて凄いと思っていた時だった。
「ーおい、亜紀斗!早くボール回せ!」
奏に呼ばれて、今はバスケの途中だったという事を思い出した。
慌てて奏にパスを回して、ゲームを再開した。
それから何度もチラチラと女子の方を見ると、いつも優里さんが中心だった。
かっこいいなぁ、凄い生き生きしてる。
「ーー亜紀斗っ!!」
そう思ってたらまた奏にいきなり名前を呼ばれた。
なんだ?ボール持ってないのに…
そう思った瞬間に顔面にボールが飛んできた。
あっ…そっちかぁ……。
俺はカッコ悪く真後ろに倒れてしまった。
「 ごめん、亜紀斗!大丈夫か?」
すぐに奏が駆けつけて俺に手を差し伸べてくれた。
その手に捕まり俺は起こしてもらった。
「大丈夫、よそ見してごめんな」
背中らへんが少し痛むがまぁ、よくあることなので特に気にしない。
なんだか視線を感じてまた女子の方を見たら、シュートを決めた直後と思われる優里さんがこちらを見ていた。
「が、ん、ば、れ!!」
拳を作って口パクで彼女がそういいながら微笑みかけてくれた。
図に乗りすぎかなとは思ったけど俺も同様に口パクで「頑張れ」と言っておいた。
この時に俺は気づいてしまった。
俺は優里さんに一目惚れしてしまった、のだと。
でもこの時の俺は知らなかった。
彼女の正体も、彼女が背負う苦しみも。