第5章 俺は一般人、彼女はヒーロー
「…あ、き…と?」
彼女は不意に口を開き、俺の名を呼んだ。
「優里っ!起きたのかっ!」
時間を確認すると残り1時間もない。
優里が起きたのを確認した研究員と教授は俺たちに気を使って出て行った。
「亜紀斗…あとどのくらい?」
「あと52分だよ、大丈夫か?」
俺がそう聞くと彼女は頷いて、からだを起こした。
ベッドが空いた部分に俺も腰掛ける。
「じゃあ、あとの時間は亜紀斗の好きな所を語り尽くそうかな」
「きっと1分も続かないよ」
「まずはとても優しい、私の正体を知っても、大嫌いと言ってもそばにいてくれた。私の馬鹿なことにも文句も言わず一緒に笑ってくれた。しかも………」
と思っていたのにペラペラ喋り始めて、途中で俺が止めたがそれは5分続いた。
「まだまだ言えるけどね?」
えへへ、と笑いながら俺にドヤ顔をする優里は元気そうだ。
そんな優里を思わず俺は抱きしめる。
「これが最初で最後にする。だから
1回だけお前に怒る」
俺はそう言ってから思ってることを全てぶつける。
「日本なんかを救うより、ずっとこの先と俺と一緒に生きて欲しかった。
最新兵器を壊すより、自分のからだを大事にして欲しかった。
嘘でも嫌いだなんて言って欲しくなかった。
もっと俺のこと頼って欲しかった。
もっといろんなことしてみたかった。
もっと…もっともっと、もっと!」
そこまで言った時に涙がこぼれそうになってしまい、必死に我慢をする。
「私、亜紀斗に愛されてるんだな…」
そう言って優里が一筋の涙を流した。
「泣くなって言ったのは優里だぞ?」
そう言う俺まで涙が溢れてきてしまった。
ずっと無理してた感情が次々と溢れ出して、2人で泣いてしまう。