第5章 俺は一般人、彼女はヒーロー
すると急に部屋の光が消え、部屋の壁や床に可愛らしい花畑が現れた。
「うぉっ⁉︎なんだ、これ!」
「プロジェクションマッピングの応用で、部屋全体にできるようにしたの!」
彼女は嬉しそうにしながら網かごから何かを取り出した。
「はいどうぞ!プチピクニックだよ!」
取り出したのはサンドイッチだった。
彼女もサンドイッチを取り出してもぐもぐと食べている。
「これ、やってみたかったにょ!」
口いっぱいにサンドイッチを詰め込んでるせいか、若干噛んでいる。
サンドイッチを食べ終わると、次はお洒落な街並みに変わった。
パリとか外国の雰囲気がある。
「亜紀斗、来てっ!!」
壁近くに俺たちは立ち、壁に沿って歩けば街の中を歩いている気分だ。
俺は何度か軽くぶつかった彼女の手を、勇気を出して握ってみた。
「プチデートだね///」
「そうだね、すごく楽しいよ」
何周か歩いていると、次の映像に切り替わった。
満天の星空の中に俺らがいる。
ベンチに座って天井の方を見れば、流れ星や月が出ていた。
「なにお願いごとした?」
「優里とずっと一緒にいれますように」
「…同じだね?私もだよ」
そう言って優里は俺の肩に頭を預けてきた。
そして海に変わり、森に変わり、遊園地に変わり、祭りに変わり、花見もした。
早い卒業式もしたし、早い誕生日もした。クリスマスもお正月も、彼女と過ごすはずだった日を味わっていく。
「次で最後だよ…その前に着替えなきゃ」
最初と同じように白い部屋に戻ったと思ったら彼女は俺に網かごを渡して、出て行ってしまった。