第2章 おそ松さん《松野 一松》
「クリスマスなのに何でこんな小汚い店に1人でいるの?
彼氏いないの?」
なんて、デリカシーの欠片もない長男の言葉に
「本当にクズでごめんね」なんて言いながら
きっとみんな彼女言葉に期待している。
こうやって弱いお酒を煽りながらも
彼女の言葉に耳を傾けている僕だって同じ様に
くいっとお猪口を飲み干すと
『いる‥‥‥かな?
ねぇ、一松くん?』
少し恥ずかしそうな掠れた声で答える彼女は
僕の方に視線を向け
ね?と首を傾げている
「え?」
「「「えーーー?!」」」
みんなの顔が一斉にこちらを振り向く
「いや、なんで一松が驚いた顔してんの」
「驚いたのはこっちだよ!
何?なんで何も言ってくれないの?
お兄ちゃんここがぎゅってなるよ?」
次から次へと飛んでくる兄弟の文句と
彼女の言葉の意味にグルグルと頭が回り
少しずつ気が遠くなっていった。