第20章 おそ松さん〈松野一松〉
恥ずかしそうにふにゃりと笑うに
モヤモヤとしたものが膨らむ
黙り込む僕を心配してなのか
不安げに名前を呼ぶの手を力任せに引くと
地面へと押し付ける
驚いた様に見上げるの瞳は
大きく見開かれ白い砂浜によく映えている
『い、一松?』
不安げに僕の名前を呼ぶ
小さな桜貝の様な唇に自身の唇を押し当てる
『っ?!』
角度を変え何回も口づければ
ゆっくりと力が抜け
は僕の舌を受け入れていく
にげまわる舌を捕まえる様に追い掛ければ
苦しいのかから甘い吐息が漏れる
くたりと力が抜けるのがわかると
ゆっくりと唇を離す
名残惜しそうに、ゴクリと喉を鳴らす
を見下ろせば
生理的な涙を溜め、なんで、と言いたそうな瞳をしていた。
「君を不幸に出来るのは僕だけだよ」
そう呟けば、彼女の瞳は大きく揺れた。
思ったことを口に出せばいい
こんなクズにキスされて、死にたいって言えばいい
顔も見たくないと言えばいい
汚い言葉で詰まって欲しい
『 』
「え」
彼女の言葉に驚いて目を開けば
先程の甘い感覚が唇に舞い戻ってくる
首の後ろで組まれた彼女の腕の重さを感じ
先ほどと立場が逆になった舌の追いかけっこに
考えることを忘れてしまう。
熱く甘い舌が僕の口内を右往左往と動き回り
ねっとりと歯列なめる
「んっ」
聞いたこともない自分の甘い声が漏れると
彼女はゆっくりと口を離し
口から溢れた唾液を赤い舌で舐めあげた。
はゆっくりと身体を起こすと
砂だらけになった身体を叩き何事となかったかのように
もう遅いから今日は近場で宿でも探そうよ。
なんていつもの笑顔を見せる。
見たこともない彼女の艶っぽい表情に
下半身に熱が集まるのと反対に
ぞくりと背筋が冷えるのを感じた。
軽はずみな逃避行の行き先は、僕が考えているよりも
深い深い場所だったのかもしれない。