第2章 おそ松さん《松野 一松》
それから週に何度か彼女と出くわし
その度に少しずつ話をするようになった
僕よりいくつか歳上な事
休みの日の私服は、カジュアルで
ゆるっとした彼女はすごく可愛い事
僕の家と一筋違いのマンションに住んでいる事
春に引っ越してきて1人暮らしをしている事
そんな彼女との時間は凄く暖かくて
初めて会った時に咲いていた桜も青く葉をつけ
木枯らしと共に落ち
イルミネーションのライトが巻かれている
彼女と出会ってから、半年以上が経っている。
『あ、一松くんいた。お疲れ様〜』
片手を上げふにゃりと笑う彼女は
鼻が少し赤くなっている
そんな彼女があまりにも可愛くて
ぎゅっと赤い鼻をつまむ
『ふぁに!痛い!』
一瞬驚いた顔をし、すぐにまた笑顔に戻る
『でも、あったか〜い』
整った顔立ちのせいかスーツを着た彼女は
凛として近づきがたく見えたが
時間が経てば経つほど、柔らかな表情を見せてくれる
半年前は絶対こんなへにゃりとした顔はしなかった
そんな、変化1つ1つが心をぎゅっとする
『ねえ、一松くん明日は何時に来るの?』
「ん‥‥決めてない」
『そっかー』
「アンタは?」
『違う。』
「え?」
となりにしゃがんでいる彼女に顔を向けると
怒ってますよ!とでも言うように
頬を膨らませている。
「え‥‥どうしたの?」
あたふたする僕のマスクをグイッと引っ張る
マスクを引っ張られ、外の空気に触れていなかった
そこが急に冷えていく
冷えていく唇にあったかくて柔らかな彼女の唇が触れると、
パチンと音を鳴らしてマスクを離す
鼻だけでなく、頬を赤く染めた彼女が
『だって言ってるじゃん』
そう言って、視線を少しずらした
「え?!」
いきなりの事に、童貞の頭じゃあ追いつかず
あ、だったり
え、だったり
間抜けな声だけが口から漏れる
「なんで?」
やっとの事で言葉にすると
『名前で呼んでってゆってるの!』
ぶっきらぼうにそうゆうと
また、足元の猫を撫で出した。