第3章 赤葦メインで誕生日
五月蝿い木兎さんが抜けると、皆で片付けを始める。
本日の主役たすきも外して、私も手伝おうとキッチンに入ったけど、すぐに追い出された。
なんでも、日付を越えるまでは主役だから、らしい。
私自身が、寧ろ家事が好きでやりたいんだけど、それには気付いていないようだ。
それでも、私の為を思ってしてくれているのだから無下には出来ず。
リビングでゆっくりとしていた。
ぼーっと、やる事もなく過ごしていると、突然消える電気。
私は、停電が苦手である。
こうなると、体が固まって動かなくなってしまう。
それを皆は知っている筈だから、誰か来てくれるだろう。
そうやって思えるだけ私は皆を信用しているようだ。
そして、その期待通り、3人は私の傍に来てくれた。
月島くんが、明かりを持っている。
「本当は木兎さんが帰る前にやりたかったんだけど。」
「アイツ、自由人だからな。俺等しかいねぇけど、勘弁な。」
「全員揃って、が難しいのは分かってよね。皆が暇な訳じゃないんだから。」
私の目の前に、明かりの灯る物が置かれた。
私を理解してくれていると分かる、フルーツの入っていないシンプルなケーキ。
その上の、数字の形をした蝋燭に火が着いている。
私を照らす、明かり。
「りら、誕生日おめでとう。」
3人の声が揃う。
それに答えるように、蝋燭の火を吹き消した。
これから先、また1人欠け、2人欠け…。
いつかは、皆も自分の道の為にこの家から出ていく。
今、一緒にいられない木兎さんがそれを物語っている。
それでも、こういう特別な日は、少しの時間でも一緒に過ごしてくれると証明された日になった。
赤葦メインで誕生日‐end.‐
【一ノ瀬ゆきみ様、リクエスト有難う御座いました!】