第3章 赤葦メインで誕生日
わさびとカラシを両方入れた、たこ焼き。
別に、オススメではないけど、自由にさせてくれなかった仕返しである。
水を要求されるのは分かっていたから、用意していたグラスを渡す。
辛いのが大丈夫な人のは、わざわざ別に作っておいた。
その人の反応が楽しみだ。
隣に目を向けると、赤葦さんが口にたこ焼きを運んだ所で。
数回口を動かして、驚いたように目を見開き、口を押さえた。
「油断、してましたよね。貴方は辛いの平気だから、特別です。」
笑いながら水の入ったグラスを差し出す。
その中身を一気に飲んで、自分の皿に残るたこ焼きを崩した。
見た目で分かるようなものじゃないと思う。
「…りら、これは何を?」
やっぱり分からなかったようで、早々に答えを求められた。
ポケットから、赤と白のパッケージに牛の絵が書かれたチューブを取り出して見せる。
「僕、そっちなら食べられる気がするけど。」
逆に甘いものが得意な月島くんが、赤葦さんの皿に箸を伸ばす。
躊躇無く口に入れてしまった姿には驚いたけど、本人は平気だったようだ。
それには、私だけじゃなくて他の人達も驚いていた。
「美味しくはないケド、食べられなくはない、かな。…で、この2種類がりらのオススメなんだ?勿論、君も食べるつもりだよね?」
月島くんが笑っている。
自分の皿から、辛いたこ焼きを箸で摘んで私の口元に持ってきた。
自業自得、だよね。
食べなきゃ駄目か。
覚悟を決めて口を開いた。
口の中に、たこ焼きが入れられる。
恐る恐る噛んでみると、香辛料独特のツンとした香りがして。
やりすぎ、を自覚した。