第3章 赤葦メインで誕生日
生地の上にキャベツ等々を投入すると、直ぐ様ピックでつつこうとする人達。
焼けないとひっくり返せる訳がないけど、自由にやらせていた方が良いだろうから、今度こそ見守る。
やっと生地が焼けてくると、ひっくり返せるようになってきたらしい。
皆して、黙々とたこ焼きをくるくると回す姿は、異様である。
そして、綺麗な球状になったたこ焼きを各自が自分の皿の上に乗せる。
「りらちゃん、俺が焼いたの食えよ!」
「木兎さんは、自分で食べたら良いんじゃないですかー?僕はそんなに食べられないから、りらが食べて。」
「ツッキーは自分で食べなさい。だから、細いんだよ。ほら、りらはコレ食え。」
何故か、皆が私の方に皿を差し出してきた。
いや、皆じゃない。
真隣に座る赤葦さんだけ、自分の皿の上でたこ焼きを箸で崩している。
それを自分の口元に持っていき息を吹き掛け冷ますようにした後…。
「あのままじゃ、熱いからね。どうぞ。」
私の口の前に持ってきた。
完全に、あーん、する気のようだ。
拒否なんかしたら、また赤葦さんがフラれたネタで弄られるんだろうな。
毎回の事なんだけど、その度に可哀想になって罪悪感に苛まれるから、今回は受け取っておこうか。
諦めの息を吐いて口を開ける。
素直に従うとは思っていなかったようで、迷うような間の後に口の中にたこ焼きを入れられた。
「…美味しい、です。有難うございます。」
私は、料理を褒められると嬉しい。
お礼を言われると作った甲斐があった、と思える。
だから、今回のこれを用意してくれた赤葦さんに、お礼を言いたかった。
ただ、それだけだ。
なのに、周りの人達は同じく、あーんをしようと箸で摘んだたこ焼きを差し出してくる。
頼むから、私にも自分で作ったり、自分のペースで食べたりする自由をくれないかな。
かといって、赤葦さんのだけ受け取っていたら、変な誤解を生むから1つずつは貰う事にしよう。
「3つも一気に食べられませんから。こっち、置いて下さい。」
空いていた皿を差し出して、その上に乗せて貰う事で解決した。