第3章 赤葦メインで誕生日
始まりと同時に木兎さんがプレゼントだ、と出してきたのは焼酎。
ちょっとレアな高いやつの一升瓶。
一応プレゼントらしくなるようにリボンが巻かれている。
私の好み分かってるな、と嬉しくなって一升瓶を抱き締めた。
その途端、聞こえたのはシャッターの音。
「センパイに送ってやるか。一升瓶抱えて喜ぶりら。」
ニヤニヤ笑いながら、スマホを操作するのは黒尾さん。
嫌がったら、更に面白がってしまいそうだから無視をして隣を見る。
たこ焼きプレートに流した生地と、ピックで格闘している赤葦さんがいた。
対面側の月島くんも、同じようにピックを使ってるけど苦戦しているようだ。
まぁ、まだ生地が殆ど焼けていないから球状になる訳はない。
でも、頑張っているようだし、焼けてきたら出来るようになるだろうから、無駄に手出しはしないようにしよう。
そう思って無言のままプレート上の液体を眺めていると、ある事に気が付いた。
プレートに流された生地には、具が何も入ってない状態だ。
生地だけ丸めてどうする。
このまま見守ったら、たこ焼きじゃない。
ただの‘焼き’が出来上がってしまう。
「赤葦さん、月島くん、ちょっと止めて下さい。」
ピックを引くように2人の手を軽く叩く。
「君が、ちょっとくらい出来る人だからって、やろうとしてる人を押し退けなくても良くない?」
「…具材抜きで作らないで欲しいだけ。」
不機嫌そうに返してきた月島くんに、ただ本心を告げる。
丸める事に必死になっていたからか、やっと気付いた月島くんは少し悔しそうで。
珍しいものを見た気分になった。