第3章 赤葦メインで誕生日
絆創膏だ。
怪我でもしたのかな。
「…手、どうしました?」
「俺、りらの事を尊敬するよ。あんな事、毎日やってるんだね。」
質問とは関係のないような返答。
最初は意味が分からなかったけど、少し考えると理解出来た。
私が毎日している事といえば料理だ。
手の怪我を指摘して、その返しなら、きっと包丁で切ったんだろう。
大学までと決めてバレーを続けているらしいのに、指を怪我してどうするんだ。
しかも今年は最後の年じゃないか。
そんなので、試合に出れる回数が減ったら…。
慣れない事をするからだ、なんて呆れよりも、心配が先にくる。
私の所為、なら謝れるけど。
私の為、にやってくれた場合は何を言えば良いんだ。
こういう時は、お礼でいい…のかな。
こっちが思考を巡らせている間に洗い物は終了してしまったようで。
目の前で綺麗になっているか確認、なんて嫌味ったらしい事は出来ず。
すっかりタイミングを見失って、謝罪もお礼も言えないまま、一緒にキッチンから出た。
すぐに食事をするかと思って、テーブル脇の椅子に座る。
赤葦さんは、何故か私の隣に座った。
他の人がいない食事の時は、対面に座って頂きたい。
「赤葦さん。」
「月島も、黒尾さんも、もうすぐ帰るみたいだから。」
呼んだだけで言いたい事は分かったらしい。
未だに私の隣席は争奪戦か、早い者勝ちになる所があるから、今回は自分の席だと主張したいようだ。
それなら文句をつける事は出来ない。
抗議するのは止めにして、話に出た2人を待った。