第1章 皆でわちゃわちゃクリスマス(2016.X'mas)
まず、渡されたものはシャンパン。
どうやら私に開けろ、という事のようだ。
蓋の部分を手で掴み、そのまま引き抜こうとした。
すぐに黒尾さんに手を掴まれて止められる。
「おいおいおい!ソコは飛ばせよ。」
確かに、蓋を飛ばして開けるのはシャンパンの醍醐味である。
だけど、部屋の中でやって、何か壊したらどうするんだ。
何もない所に向けても、跳ね返って当たる可能性がある以上はやりたくない。
助けを求めて、ノり気じゃなさそうな2人に目を向ける。
月島くんが、チラっと何かを見た。
それと同じ方向を、赤葦さんが指差してる。
その、示された場所は私の真隣に座る、黒尾さんだった。
まさか、人に向けろとか言わないよな。
「やっても良いと思うよ。」
「僕も賛成。」
にこやかに言う2人は、寧ろやれ、と強制している気がする。
その視線が自分に向いている事に気付いて、黒尾さんが体を引いた。
「りらちゃん、早くしろよー!」
何も分かっていない呑気な木兎さんの催促。
流石に人を怪我させるのは嫌で、シャンパンのボトルをテーブルに置いた。
「私、シャンパンは得意じゃないので。」
立ち上がってキッチンの方に移動する。
冷蔵庫を開けて、中から取り出したのは炭酸が入っている缶のアルコール飲料。
皆から見えない場所で、それを思い切り振っておく。
期待されていたようだから、怪我しない程度に何かをしてやろうと思った。
「りら、珍しくね?お前が焼酎以外の飲むとか。」
危機を察知したのか、目敏く私の手の中にある物に気付いた黒尾さん。
無言のまま席に戻って、缶を開けた。