第2章 皆でわちゃわちゃお正月(2017.正月)
半分こ、ってなんだ。
私は物か。
そう、突っ込みたかったけど、2人に会えた事が嬉しいのは事実で。
言って、手を離されるのは嫌だったから黙っておいた。
長かったように見えた列は、思ったよりスムーズに進んで、賽銭箱の前まで辿り着くと離れていく2人の手。
「りら、神社のお参りってどうやるか、分かる?」
「赤葦、りらは結構礼儀を重んじるタイプだぞ。知らない訳ねぇだろ。
何?知らないの期待して、手取り足取りー…とか考えてた?」
「黒尾さんには、話し掛けてません。しかも、神様の前で下品です。」
赤葦さんの質問に答える前に黒尾さんが反応する。
神様の前で、って言うなら言い合い自体を止して貰いたい。
2人は無視する事にした。
黒尾さんの言うように流石にお参りの仕方は分かっていて、賽銭を静かに投げる。
2礼、2拍、1礼。
さっさとお参りをして列から外れた。
すぐ後から、お参りを済ませて追ってくる2人。
神社から出ると、2人は各々の実家に帰るものだと思っていたけど、何故か家まで一緒についてきた。
「お正月は、実家で過ごすのでは?」
「年越しだけ過ごしたら充分だろ。ガキじゃねんだから。」
「俺も、もうこっちに戻るって話してあるから。」
「俺が帰って来なかったら、2人きりだったのにな?アララ、赤葦クン、ザンネン。」
「黒尾さん、いい加減にして下さい。」
私の質問から、また始まってしまった言い合い。
この2人、こんなに相性悪かったかな。
まぁ、赤葦さんのストーカー的な行動がバレてしまってからは、周りに少し警戒されている所があったし、仕方ないか。
2人を止める気にはならず、先に家に入ろうと玄関を開ける。
すぐに目に入った、脱ぎ散らかされた靴。
誰の物かは、すぐに分かる。
本当にお正月を一緒に過ごしたかったのは、この家の家族である同居人の皆。
2人に会えただけでも嬉しいというのに、まだ良い事があっていいのだろうか。
扉の音で帰宅に気付いただろう、脱ぎ散らかされた靴の主がリビングの方から顔を出して。
「りらちゃん!あけおめ!」
すぐに、私に抱き着きにきた。