第2章 皆でわちゃわちゃお正月(2017.正月)
年末、一応はまだ親の庇護下にある学生4人は、それぞれの実家に帰っていった。
まぁ、こればっかりは仕方がない事だと諦めて、私も挨拶だけをしに実家に帰った。
大晦日も元旦も、一緒にいるだけで疲れるような血の繋がった家族と過ごすなんて嫌で。
すぐに帰ろうとしたけど、両親に引き留められ。
大晦日のお蕎麦、正月用のお節、雑煮の準備を全てやらされ。
結局、疲れて帰れず、実家で年を越し。
元旦は、朝の内に挨拶して帰ろうとしたけど…。
それは、出来なくなった。
何故か、実家に来ていたのだ。
あの人が。
居間の襖を開ける前から声が聞こえていて、まさかとは思ったけど。
何で、いるんだ。
自然に、家の中に溶け込むの、止めて頂けませんか。
「…赤葦さん。」
その名前を呼んだだけで、昨日からの疲れが押し寄せて、その場にしゃがみ込む。
「りら、明けましておめでとう。」
私の姿を見て、当たり前のように挨拶をしてきたその人は、父と酒を酌み交わしていた。
何となく、状況は分かった。
元々、父の知り合いでもある赤葦さんは、新年の挨拶という事で家に来たんだ。
アポも取らずに突然、なんて非常識な事はしないだろうから、事前に約束していたんだろう。
だから、昨日は帰らせてくれなかったんだ。
私を追い掛ける為に接触してきた事を、父自身は知らず。
私との和解に貢献した彼は信用されていて。
赤葦さんと私にどうにかなって欲しいようだから。
こうなると、私に出来る事は諦めるだけだ。
親に促されるまま、赤葦さんの隣に座って一緒に飲む事にした。