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境界線。【安室透夢小説】

第8章 普通の定義を述べよ。


安室side


今日、もしもの時に備えて手錠を持っていた。
結局、使うことはなかったが。




全く。俺はなんて馬鹿なことを。
如月知佳くんが誘拐事件の被害者として捜索されているとを知りながら.....
警察としてありえないだろう...。


約束の時刻ももうすぐすぎようとしている。
如月知佳くんは疲れてしまったようで後部座席で眠ってしまった。


「 くのえさん、今日1日2人と過ごして一つ気づいたのことがあります。」

「.....なんですか?」

「如月知佳という少年には、およそごく一般的な家族との思い出、信頼関係などが欠如している。ということです。」


「.....ごく一般的、ですか?」


「はい。例えば今日みたいに家族と出かけるといった普通のこと。彼は経験がなかったようですし。そして、これはなんの根拠もない推測ですが、きっと貴方も。」





「..........安室さんの思う普通ってなんですか?私にはありましたよ。普通の思い出。きっと知佳くんも。"一般的"とか"普通"の定義ってきっと、考える人の尺度によって変わってくると思うんですよね。私にとっては、私が送って来た日常生活が普通なんです。私と安室さんは同じじゃありませんから。」


「.....では、 くのえさんの送って来た普通の生活ってなんですか?」




「.....私ですか?.........1人でいることですかね。父にも母にも疎まれてそれでも外では仲良し親子を演じて、両親から必要とされず、家のどこにも私の居場所はありませんでした。これが私の送って来た普通の生活です。」


「...................普通。」




「あ、そうだ、そろそろ知りたいですよね、他にも色々と。......今からなら安室さんのよ聞きたいことなんでもお答えしますよ。......なんでもね。」


そういって くのえさんは微笑んだ。





第9章につづく

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