八つ葉の魔導書(グリモワール)【ブラッククローバー】
第17章 ページ17、二人きりの時間
謝って消えるものではない。
謝っただけで、なくなるものではない。
それはただの、いじめた側の自己満足でしかない。
ただ、その行動の責任を取った気になっているだけに過ぎない。
一生拭い落とせぬその傷は、たとえされた本人が赦したとしても消えるものではない。
当時の恐怖は変わらず底に残り、フラッシュバックを起こしては死にたい衝動に駆られることになる。
人が近付くだけで、何かされるだけで怯えるようにもなる。
それを知っていて、それでもなお何事もないかのように平然と過ごしている者もまた同罪だ。
だからこそ…ノゼルはそれが赦せず、全員処刑したのだろう。
命を奪ってもなお、その価値に釣り合わないということから、いたぶるように虐殺して…
はっきり言うと
いじめっ子は、いじめられっ子の優しさに胡坐をかいて好き勝手に罵っては傷付けているようにしか見えてならない。
というより、それ以外に見えない。
今後の人の人生を左右する、残虐にもあたる行為だと理解した。
ケイトの場合、いじめられてもなお生きてはいるわけだが
こうして笑い合えるまで、非常に大変時間がかかった。
人混みの多い所では吐きそうになり、笑って歩くことなども不可能だった。
はっきり言うと、いじめによる後遺症がひど過ぎる。
その当時と比べれば遥かにマシになったわけなのだが…
やはり傷は残ったままで、当時の感情はより深刻なようだ。
感情が蘇った分、狂いかけていた。
私が傍に居れば止められるが、傍にいないとなると…
そう考えては、不安はなくならなかった。
!そうだ!
この旅行で、私の代わりだと思えるものをプレゼントしよう!
「これを私だと思ってくれ!」と!
何か肌身離さず身につけられるものがあれば、きっと安心できるはずだ。
よし、最終日の予定は決まった!
そう思いながら、思い至った考えに満足げに笑って頷いた時
ちゅんちゅんちゅんっ♪
鳥の鳴き声と共に、朝日の光が煌々と窓から入ってきた。
フエゴレオン「…………眠れなかった;一睡でさえも;」汗
未だに、気持ちよさそうに笑って眠るケイトの傍らで
私は一人、冷や汗交じりに呟くばかりだった。
その光はどこまでも眩しく澄んでいて、私達を温かく包み込んでいた。