八つ葉の魔導書(グリモワール)【ブラッククローバー】
第17章 ページ17、二人きりの時間
「自分を受け入れる人なんて
いるわけがないんだ…いる方がおかしいんだ」
そういった日常が、それを形作っていった。
その認識や概念を植え付けてきたのは…他でもない周囲で、環境だった。
絶望して話しかけないようにすることで、護ろうとした。
他人だけでなく、自分も。
周囲から悪く言われるまま、感情を殺して、消して…
多人数を相手に強く言えず、父にも強く言えず、押し殺す以外の選択肢は与えられなかった。
自分を殺せば争わずに済む、言い返せば争いになり相手の傷は増えない。自分さえ死ねば丸く収まる。
誰かが新たに傷付いたり、そういうのは嫌だからこそ
自分よりも他を思い遣れるからこその行為だと、周りは見ようともしなかった。
行動しかとらえず、経緯も考えも当時の状況も。
理解しようとする人も居ず、味方もいない。
その上、話しかけようともされないまま、話そうともしないまま
互いに、互いを理解する術を失っていた。
決めつけ否定されるばかりの毎日で、上記のような固定観念が出来上がった。
しかもそれは1年所ではなく、何年にも渡って続いていた。
その過去を知るものは口をそろえて言う。
「普通の人ならば自殺している」と。
毎日にわたって繰り広げられたのは
独りのケイトが、多人数から一方的に決めつけられ孤立させられること。
周囲は好きに言い、決めつけ、見下し、否定し、拒絶し、話しかけず、受け入れようともせず…
そういった環境から、生み出されたのがあの狂気的な笑いだ。
(410ページ参照)
そうして助けを求めてもどうにもならない環境となり、先生などに助けを求めて話すと
告げ口と言われ、チクったとののしられ、全て悪くとらえられる。
「悪いことをしたのは自分だけだ」という概念を何年にも渡って植え付けられ、今後の人生に多大な被害を与える。
渡る世間は鬼しかいない。
そんな悪環境では、人間に心を開くなど皆無に等しい。
それが日常となっていたことから
その結果、それが当たり前と感じるようになっていた。
私と出会い、それを教わるまでは…
だからこそ…
この純粋な笑顔が、どれほど貴重なものなのかがわかる。
私に抱き付いたまま、無邪気に笑いながら安心したように眠るケイトを見て
私もまた、この上なく安心していた。