八つ葉の魔導書(グリモワール)【ブラッククローバー】
第16章 ページ16、遠征
そう思った矢先、私の脳裏にある言葉が浮かんだ。
『忘れてはいけないよ?』
太陽を前に、私に背を向けて言われた言葉がちらつく。
『たとえ君の命が、自分でどうにでも出来るものだとしても…その命は、先祖からの「贈り物」だ。
数え切れないほど、たくさんの人達が動物達が植物達が数多の存在が…寄り添い、支え合い、互いに干渉し合うことで、ようやく君は生まれた。私も生まれることができた。
この世に、君の義理の祖父として存在できた』
ケイト『っ…』ぼろっ
涙が溢れて、止まらなかった頃を思い出す。
そうか…これは……
『だからケイト…どうか、忘れないでくれ。
君が……母の死をきっかけに、自分が死んでいた方がと思っても…
自分のことを、その命を、人の命のように想ってやりなさい。
最愛の母と同じように、君の命は尊い』
そう言いながらしゃがみ
魔法帝の死と母親の死を重ね合わせて泣きじゃくっていた18歳の私の前で、頭をそっと撫でた。
私の父を引き取ってくれた、ヴァーミリオン家の前の前の当主で、相談役だった人…
あんな父を殺される最期まで信じようとしてくれた、温情ある優しい人だった。
父の件故に、衰弱して寝込んでしまっていたらしい…;
(55ページ参照)
数回しか話したことがなかったけど、ちゃんと見て寄り添ってくれる人だった。
フエゴレオンにとっては父方の祖父で…先週の3月13日に死んだ。
衰弱死というより、老衰だったとのことで…
お通夜と葬式には間に合ったけど、最期まで私のことを気にかけてくれていたらしい。
『いいかい?大事にするんだ。大切に想うんだ。
愛しい誰かを信じ、愛し、寄り添うように。自身にも寄り添って、けなさないで、大事にして生きていきなさい。
そうすることが…母が喜ぶ、私達が喜ぶ、最大の贈り物なんだよ』
ケイト『…はい!!
やくぞく…じます!!!』
涙ながらに、必死に叫んだことを今でも憶えている。
ちゃんと生きようと、前を向こうと頑張れたことも…
だからこそ魔法帝が死んだ後、ああ言えた……
(359ページ参照)
葬儀の後、その言葉のおかげで立ち直れたのだと
その件をフエゴレオンに話すと
「私にも相談して欲しかった」そうだ。
そういう部分は祖父、父、と三代続いてそっくりだと思って笑った。