八つ葉の魔導書(グリモワール)【ブラッククローバー】
第15章 ページ15、喪失
『戻ってこい。
頼むから…(ぎゅううう)
私の隣に、帰ってきてくれ』
そう願いながら、抱き締める力を強めながら
私は祈りつつ、優しく包み込むように唇を重ねる。
ちゅっ
小さな音が、微かに響く。
だが、ケイトの中には響いたようで…
ケイト「なんだ?…
温かい……)
!!??//」
目を開ける所が、私の目に映った。
その驚きと共に、魔が瞬時に散り散りに消えていき
最後に、私の傷を癒やしていった。
肌を焦がしていた焼けるような痛みが、瞬時に消え去っていく中
私は、唇を離さぬままでいた。
すっ
時間にして数分ほど…私達は唇を合わせたままでいた。
その間に、少しずつ…
周囲へ解き放たれていた魔は崩れていき、晴天の空を残して空気へ消えていった。
それを確認してから、私はそっと離れた。
フエゴレオン「ケイト…」
真っ直ぐに目を見つめながら名を呼ぶと
ケイト「フエゴ…レオン…?//」
戸惑ったような声と、赤らんだ顔が見えた。
それを確認してから、伝えたかった言葉を伝えた。
フエゴレオン「……全てを、一人で背負おうとするな」
ケイト「…え?」
フエゴレオン「お前一人の責任ではない。
誰にも、平等に責任は存在する。
一人だけのせいで起こることなどないし、全てを一人のせいにするのはもっと違う」
ケイト「……でも、私が
フエゴレオン「私も動けなかった。
一人で背負い込むな。お前の悪いくせだ」なで
ケイト「……(じわっ)
……ごめん、ルドルフ…護れなくて、ごめん」
そっと頭に手を置いて撫でると…
目に涙を滲ませながら、ケイトは謝った。
だが…
その言葉は見当違いで、本当に言うべきことではないとその場の誰もが分かっていた。
それでも、どうしても伝えたかったのだろう。
『すまない』と最期に送られた言葉に
護られたことへの感謝よりも、護れなかったことへの謝罪を。
謝るのはこちらの方だと、言うかのように……
その涙声は、戦場に小さく響いた。