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八つ葉の魔導書(グリモワール)【ブラッククローバー】

第3章 ページ3、光





その時、私は動けずにいた。


ベッドに縛り付けられていたが故か

あまりに力も弱々しく、それでいながら…必死に縋っているように見えて。



僅かにでも動けば

その必死に伸ばした右手を、振り払ってしまいそうで。




その時、か細い声が聞こえた。


耳を澄ましていないと聞き取れないような

そんな弱々しく、痛々しくも思える声が。




ケイト「…あきらめ、てた。


ずっと…そうだと

そういう、目を…あじわうのが当たり前だって……



ころされたり…きずつけられたり

そのために…お前はいるんだって……」


しゃっくりを上げながら、涙を流しながら


私に目を真っ直ぐ向けながら

必死に伝えようとしてくれたのは、これが初めてだった。



最初に会った時

父に連れられてきたこの子は
誰とも話さず、目も合わせようとせず口も開かず


ただただ、人という存在に怯えているように見えて

決して、歩み寄ろうとはしなかった。



部屋に入っても

そっとケイトへ触っても何も反応を示さず


死人のように見えた。



しかし…

その言葉から、そうならざるを得なかったのだと
幼い頭でも理解できた。



そうでなければきっと…

それらの苦痛を処理し切れず、狂ってしまっていただろうから。




ケイト「お前が居なかったら

誰も…死ななかったんだって;」


その弱々しく細った手を握り返し

再び抱き締めた。



この子に足りないのは、きっと…

誰かから向けられる、温かな愛情だと解ったから。



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