八つ葉の魔導書(グリモワール)【ブラッククローバー】
第7章 ページ7、異邦人
一週間が経って、ケイトが自由になり
再び魔法学校へ通おうとしていた頃、使用人が玄関先で忠告していた。
「海岸には異邦人が暮らしているらしいから気を付けろ」と
ケイト「?異邦人」
使用人「はい。ですから、海岸には近づかないように」
ケイト「…」にやり
使用人「あの?;絶対やめて下さいね?」
ケイト「解ってるって^^」
まあ、いずれにせよ知られるのは間違いないのだが…
絶対に行くだろうな;
その予想は言わずもがなで、誰もが解り切っていた。
そんな行く気満々のケイトを見送る中
一週間の間に、ケイトから教わったことが脳裏によぎった。
ハーミット一族は、王貴界の中でも外れの方に住んでおり
唯一の田舎のような場所でありながら、自然豊かで
そこに住む人たちを守りながら生きていた。
なぜハーミットなのかというと、それには理由があった。
元来、王族は王都で暮らすことが普通だった。
だが
人が暮らしやすくするために、自然が壊されて行く様に胸を痛め
もともとクローバー王国にあった自然を、王都にするよりも守りたかったそうだ。
そして暮らしをよりよくするために都の発展に力を注ぎ
隠れ住むように、王貴界の中でも隅に住んでいたからである。
なおかつ、王や民を守ることも同時進行でやっており
魔法騎士団随一の力を持つ者として活躍していたらしい。
わけなのだが
ハーミット一族が居なくなってから取り仕切るものもなくなり、4年1か月も経った頃
その場所に住む住民たちの要望から
そこにあった自然は恵外界や平界の田舎へと移され、王都へと変えることになる。
本人にそれを伝えられたのは、魔法帝と初めて会った日。
王宮に連れられて行く際、王都に変えることの了承を頼まれたらしい。
幼い頃から過ごしていた実家も居場所もなくしていたことを、今になって語り出した。
その心境たるや、どんなに辛く寂しかっただろうか。
そう語りながら涙ぐむ姿に
当時の私は優しく抱き締め、背を撫でた。
ここ(ヴァーミリオン家)が、ケイトにとっての「故郷」となることを願いながら…
それにケイトは「大丈夫^^」と笑って答えたが
その目は笑ってはおらず
安心させようと無理に笑うそれが、いやに痛々しく見えた。