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【文豪ストレイドッグス】 short story

第1章 不器用な恋文【太宰治】


気付いた時にはすでに遅かった。ふわりと太宰のいい匂いが私を包み込む。後ろから抱きしめられたのだ。どっちのものかわからない心臓の音がやけに煩かった。

「ちょ、だざ」
「好き」 か細い声がハッキリと私の脳裏に響く。
「は」
太宰は今、なんて。鼓動が早くなる。もしかして、もしかして

「・・・あーあ、嫉妬じゃないのかあ残念だなあ」
「・・・・太宰」
「嫉妬されたかったなあ」
「・・・・太宰」
「やっぱりほかの女の子に」
「太宰ッ!!」

太宰の名を呼ぶ。身体が熱い。自覚する。
1秒1秒がとても長く感じる。
嗚呼どうしよう、遂に自覚、してしまった。

「・・・・」
「・・・・・どうしたの。梢」
「梢、ちゃんと云ってくれなきゃ、わかんないよ」
「・・わた・・・す・・・き」
「・・・・」
「す、き」

ハッキリと一語一語を紡ぐ。たった2文字の言葉。
あの恋文よりも、気持ちを込めて。それは私なりのメッセージ

「私も好きだって、云ってんの。・・・これ以上、言わせんなよバカ・・・」
「・・・ふふ」

沈黙を破ったのは予想外にも奴の笑い声。

「ふふ、・・・ずっと待ってた」
「・・・は・・・?」
「君が如何したら私のものになるか、ずっと考えていたのだよ。」
「・・・・は」
「だからやっぱり、君のほうに気付かせるのが一番だという結論に至った。」

あの太宰の鋭い目が私を射抜く。

「じゃ、じゃあ私はずっと太宰の掌のうえで・・」
「その言い方は酷いなあ」
「気づかせてあげたんだよ、わたしが、ね?」
「・・・・・っっ!!!この阿保ーーーーーーっっ!!!!」

やっぱり、この男はいけ好かない。なんて男だ。思わず笑みが零れる。
どうしよう・・、今、途轍もなく幸せだ


***
後日

「コラーーーーーーッッ!!!!貴様ら仕事をほっぽらかして何処へ行っていたのだああああ!!!」
「・・国木田・・グス・・・聞くな・・ばかやろ・・」
「えっ」
「はー、こんなにいいお天気の日はないね!敦君!!私はすっきりしたよ!!気持ちよかったなあ」
「太宰さん、外、雨降ってます。」
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