第8章 青春より黒春ってか?【太宰治】
そう云ったかと思うと、急に太宰さんの顔が近くなった。
一気に顔に全身の血液が集中するのがわかる。
これは・・・接吻(キス)?
「ん・・ちょ、ま・・」
息継ぎしようと太宰さんに抵抗を試みるが全く聞かない。ヒョロッとしてはいるけど、流石、男の人だ。がっちりと私の頭に手をまわして、離れられないようにする。
「んんん・・・・や、ちょ、・・あやっ・・」
口腔に侵入した太宰さんの熱い舌は私の中をかき乱す。
漸く離れたかと思うと、何度も何度も角度を変えて私に口づけする。
長い接吻(キス)が終わった時には、互いの口から淫靡な糸が引いていて、一寸ドキドキした。
「はぁ、はぁ、は・・ど、どういうことですか。だざ、いさん」
「ふふこういうことだよ」
「こういうことって・・・!!」
「つ、つまり。貴方は・・・私のことが好き、だというのですか・・・?」
自分で云っておきながら、今更顔にまた熱が集まる。
今にもカアアアと音がしそうだった。
「そういうこと」
太宰さんは余裕のある笑みで私の頬に触れる。
それがなんだか悔しかった。
「所詮、私が世の乙女たちにいつもしている顔、偽りの顔なのだよ」
「偽り・・・?」
「否、一寸違うな・・。それも私であるのか・・」
ぶつぶつと独り言を続ける。なかなか、しっくりくる言葉がないのかううんと唸っていた。が、それは直ぐに終わりを迎え、
「兎に角、君に見せる私が本当の私なのだ。」
「私は滅多にそんなことをしないよ。それはね、君を本当に想っているからこそなのだ。」
「私を・・想って・・」
「だから勘違いしないでおくれ。私が一人の女として、愛しているのは君だけなのだ」