第1章 不器用な恋文【太宰治】
「嗚呼・・・そんなことがあったわけね。」
どんちゃん騒ぎの後、私は乱歩さんと、喫茶うずまきで休憩していた。ちなみに、どうなったのかというと、長くなるので大体割愛して結果的に、太宰が私と国木田によって窓から投げ捨てられたという此方側の大々的勝利に終わった。
あちゅし君は優しいから、うわああああっっっ!!!と助けに行っていたけど、国木田と私はもうそれはそれは、満面の笑みですっきりした表情を浮かべていた。その国木田の表情をみた潤君が一瞬にしてこの世の終わりみたいな顔をしていたのを私は決して忘れない。
「まあ、太宰なら殺しても死なないような男なので大丈夫とは思いますけどね。あわよくば全治2週間の怪我になってることを祈ってますよ。」
ズズーッと、珈琲をすする私に、つまらなさそうにパフェをペロリと平らげている乱歩さんが、そういえば、と切り出した。
「あの大量のおぞましいメールはどうしたの?恋文は処分できるとしても、会社用のメールならアドレス変えるわけにもいけないしねえ。」
「そりゃもう・・・、とりあえず一個一個受信拒否にしてって、そのあとに削除しましたよ。クソめんどかったっすけどね。それから太宰への殺意が沸々と湧いてきたので、太宰の私用アドレスに、超厄介なウイルスを送りつけました。」
「うわそんな面倒な事したの?僕だったら、適当に誰かに任せるね。まあ、梢が天才ハッカーだからこそできるってのもあるだろうけど。あ、でも僕のほうが天才だからね。」
相変わらずだなあ、と苦笑いする。
すると、カランカランと客を知らせる鐘が鳴った。
ふと目をやると、それはもう愛しの、あちゅし君で。
「あちゅしくうううん!!」
そう呼びかけてやると、此方に気付いたのか可愛い顔で此方に駆け寄ってきた。おお、可愛いのう。天使か、天使なのか?
「梢さん!!実は、太宰さんが・・・」
「は。」
一瞬厭な予感が脳裏をよぎる。まさか、本当に全治2週間・・・?その様子を見た乱歩さんがふ、と笑っていた気がした。
「職務を放棄して逃亡しました!!!」
「あんの野郎おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」