第1章 不器用な恋文【太宰治】
「ねえ、太宰此れ何。」
「うん?うふふ、実は熱狂的なファンが多くてね」
「否、そういうことじゃねーんだわ。此れ、何。」
徹夜明けの出勤。目に隈をたっぷりと作って昼出勤した私に、これ以上何をしろというのか。
出勤してまず目を疑ったのは、会社の備品である私のパソコンに大量のメールと、そして机には大量の封筒がおかれてある現状だった。
内容はどれも同じようなもので
「太宰サマ。貴方ヲ、オ慕イシテオリマス。如何カ私ダケヲ見テクダサイマシ。」
といった、明らか原因及び犯人が誰なのかを示すものだった。
私ダケヲ愛シテアイシテアイシテアイシテアイs(自主規制)等どれもこれも狂気的で、今までよく此奴生きてこられたなという同情の目をやめることができない。というか、此奴が不埒だからいけないのか、どんな娘にも好い顔をするから、嗚呼一寸腹立ってきた。一遍太宰死ね。
太宰はスッと目を細め満面の笑みならぬ満面のどや顔でこう云った。
「いやね、私・・・・モテるから」
「そう・・・。じゃ、一遍死にましょうか。」
スッと自分の机の上に置いてある物差しを取り出す。今日ほど物差しは人を殺すためにあるのだとしみじみと感じたことはない。
「いやいやいやあの、ちょ、待って、た、確かに君に殺されるなんて凄く素敵な話だと思うのだけど、私にも心の準備が・・・ままま待って、一旦落ち着こうははは」
太宰は慌てて私の手首を握り物差しを振りかざそうとする私を止める。
隣ではぶるぶると生まれたての小鹿のように震えてうずくまる愛しのマイエンジェルこと、あちゅし君と、俺は何時でも殺れるぞ的な意味を込めた親指をぐっと天高くつきたてる国木田がいた。
そこで一瞬我に返る私。あっ、ちゃんと社外で殺らないと。
「うふふまあいいじゃないか、たまには、ね?(汗)」
「否、たまもクソもないから、二度とするな。なぜに、私の会社用パソコンにこんなクレイジー(笑)なメールが来るわけ?そう、答えはひとつ、手前が自分のアドレスと偽って、私のアドレスを女共に教えたからだろーーーーーーがァァッ!!!!」
「ぎゃああああああああああ!!!!」
「ぎゃああああああああああ!!!!(敦)」
「おらああああああああああ!!!!(国木田)」
一瞬で社内は戦場(一方的な)と化した。
「えっなにこれ」
乱歩はつぶやいた。