第2章 I know you
結局、安倍晴明は『空神様』の言う事を受け入れた。
「仕方ありませんね」と無念さを滲ませながらも、私を見る目には優しい色が浮かんでいた。
その後、安倍晴明は「私は先に『飛龍』にてお持ちしております」と此処を離れ、『空神様』は明朝に零戦で向かう事になった。
それから犬族の皆で零戦を離陸出来る場所まで移動させ、『空神様』は一人で長い時間を掛けてその機体を整備している。
薄闇の中、松明一本の光で作業を続ける『空神様』に
「食事をお持ちしました。」
そう声を掛けると
「おう。
丁度一段落着いた所だ。」
『空神様』は私の持って来た食事に手を出し始めた。
その姿に目を細めながら、私は機体に近付きそっと手を触れる。
「何だァ?
手前ェ、戦闘機に興味あんのか?」
「…………少しだけ。」
『空神様』の問い掛けに、私はそう答えて機体に触れた手を下ろした。
「そいつはなあ、紫電改ッつーんだ。」
「紫電改。
…………零戦とは違うのですか?」
「ああン!?
零戦なんかとは比べモンにならねー位に強いぜ、そいつは。」
「そう…ですか。」
私はフッと睫毛を伏せる。
そんな私に『空神様』はまた問い掛けた。