第8章 第八章
「ふふっ…なんかお母さんになった気分だよ」
「主さんは兼さんを刀解したりしないんですか?」
「どうして?」
「いえ。元の主は喧嘩でなにかあった場合とかで、刀が怪我をするのを一番嫌っていましたから…」
まるでそれは彼らへの見せしめのように、面倒な芽を潰しておく。それが前の主…夏栄のやり方だったようだ。なぜそこまでしなくては行けなかったのだろうかと思うも、笑って声を掛ける事は今の私には無理だった。
「僕は兼さんを刀解して欲しくはないです。でもそれは主さんが決める事ですから…」
「手入れが終わった和泉守さんを刀解なんてしないよ…」
というか刀解した所で資源とか余り貰えないし…出陣や遠征で拾うなり、万屋で資源を買った方がずっとか楽なのではないだろうかと思ってしまう。やはりこの世は金である、あぁ…私ってなんてゲスい考え方の出来る人間なのだろうか。嫌だ、嫌だ。
「まぁ…そこまで気にしなくてもいいと思うよ。十人十色っていうでしょう?考えや好み、性質とか…人によってそれぞれ異なるようなモノだし。刀剣男士だって人の身体を得たなら仕方ないんじゃないかな?」
「それじゃあ…お咎めなし?」
「うん、そう言う事になるかな?」
罰で刀解とか余りにも可哀想ではないかと思う。考え方が違って対立するのは仕方がない、まぁ重症で帰還されるこちらの身にもなって貰いたい所ではあるが…流石に精神が持ちそうにないからである。
「ごめん…主さん」
「!?ちょ、えっ…な、なんで泣くの?」
安心するようにポロポロと涙を流した堀川くんにぎょっとしてしまう私はあわあわとするしか出来なかった。私は無意識に傷付けてしまったのだろうかと畳まれていた布ハンカチで堀川くんに差し出す、泣きながらに取ってくれて顔を覆う堀川くんを抱き締めながらにどうしたと聞いて見た。
「ううん、なんでもないんだ…兼さんの事、ありがとう」
「和泉守さんの事大好きだもんね…大丈夫。歴史を守る同志だものそう簡単に刀解なんて出来ないよ」
私の胸の中で泣きじゃくる堀川くんを安心させるように背中をぽんぽん撫でながら泣き止むまで寄り添った。彼は甘えるように私の背中に両腕を回して来る、涙声で私を見上げた堀川くんは呟いた。
「本当…主さんは暖かい人ですね」
「そう?私は堀川くんの抱き心地の良さに眠くなりそうだよ…」
「うーん、それなら一緒に寝ますか」