第8章 第八章
和泉守さんとの話しを終えてから、陸奥守さんの怪我を治す。太陽のようにニコニコと明るい彼を見せてくれたというのに今は真逆に近い。顔に不機嫌と書いてあるように思えた。
「陸奥守さん…」
「わしはどうもあの男は好かんきに…」
「まぁ、土方の刀ですし…相容れないのは分かるんですけど」
「新選組の刀とは喧嘩になりそうぜよ…あいつら時代の流れについていけんかったけのう」
いや、喧嘩になりそう…ではなくもうなってますって。だからそんなにボロボロなんじゃないですか?とツッコもう思ったが止めた。むっとした顔で私に拳銃を見せて言葉を続ける。
「時代は拳銃ぜよ。やっとうなんて、時代遅れじゃ」
「まさかとは思いますけど、喧嘩の理由ってそれですか?」
私の言葉に頷いた陸奥守さんに一瞬打粉を床へ落としそうになった。いやはや一番相容れない部分で喧嘩になったと…いやまぁ大事な話しだとは思うけれど。そんなとは失礼だけれど…理由で刀抜く程の喧嘩になるか普通。呆れてモノも言えないわと頭を抱えた。
「坂本龍馬は時代を生きる人で有名ですからね…」
「おんしゃ、坂本龍馬を知っておるか!」
「それは勿論、知らない人の方が少ないくらいじゃないでしょうか?」
坂本龍馬の博物館や展示会とか、銅像とか、教科書にも乗っている。坂本龍馬の生涯をドラマにしたりするくらいの人だ。どんな人か知らなくても名前は知っているという人もいるんじゃないだろうか、それくらい大きく歴史に関わっている人だと思う。
「おんしはよう分かっちょる…坂本龍馬は偉大な人じゃった」
「古き考え方をする新選組の刀と、新たな考え方をする坂本龍馬の刀ですか…」
「時代の流れは早いもんじゃ」
「そうですね…だから誰かが前人を切って突き進まないと時代の波に呑まれてしまう。どちらが正しいのか、どちらが間違っていたのかは分かり兼ねますが…」
しかし坂本龍馬がいたから私が生きていた世界になれたというのは証明出来る。歴史は移り変わりゆくモノだ、誰かの生涯をかけたおかげで成り立っているという事でもある。
「だから…うん。分からなくなる時があるんですよ。歴史修正主義者が暗殺された坂本龍馬を助けたとして…この世界はまた違っていたのかなと」
「おんし、審神者というのを分かっておるんか…」
「はい、でも気持ちは分からなくもないなと」
苦笑いする私は少し考えてしまう