第7章 第七章
待て、本当に待って…やっぱり私が縛るの?いや、亀甲縛りでしょう?うん、まぁ…出来るけど、出来るけども…色々と駄目だと思うんだ。だから私は…亀甲貞宗さんに向かって低い声で張り上げた。
「お座り!」
「っっ!」
まさに犬のように、命令した。ビクンと大きく反応すると私の手首を離した亀甲さんは犬のようにお座りした。お手…と呟けばそっと私の手のひらに手を重ねられる。うん…なんか面白いなと内心笑いを堪えるのに必死になってしまう。なんとか我慢して、苦笑いを浮かべながら尋ねて見る。
「あの…そんなに嬉しそうな顔しないで下さいませんか?」
「あぁ…ごめんね、ご主人様が、犬のご奉仕を…ご所望だったなんて、僕…気付かなくて…」
「いや、別に犬プレイなんて好きじゃねぇよ…」
成り行きでこうなっただけであって、そんなアブノーマルなプレイを好きって誰得だよ。と一人ツッコミを入れる。私の口の悪さにときめくような表情をする亀甲さんは微笑んだ。行き場を失った手のひらを下ろすと、亀甲さんもまた手を下ろした。しかし今この状況が不思議でたまらない…襲われそうというか、襲いそうというか立場的にどちらなのか分からないけれど、後ろへ後ずさりしている私に『犬のように待て』を続けている彼…亀甲さんがいる訳である。
「……ご主人様、僕に腰を治させて?沢山ご主人様にご奉仕したいんだ」
「按摩か…やはり按摩なのか…結局最初に戻って来るんだね?」
げんなりする私はもう逃げ場はないなと考える。大声を上げれば他の刀剣男士が来るだろうが、いかがわしい事をしている訳でもないし…ましてやされている訳でもない。それなのに彼を悪者扱いするのは余りにも可哀想じゃないだろうかと妙な良心が痛むからだ。私はふぅ…と小さくため息を吐いて亀甲さんの頬を撫でた。そう…彼を犬だと思えばいいのだと思う。長谷部さんとはまた違う、忠実な犬…イヌ、いぬ…そう考えると亀甲さんが可愛らしく見えた。
「おー…よしよしっ!」
「えっ、あの…ご、ご主人様っ?」
天下のムツゴロウさんのような構い方をして、頭から身体を撫で回す。いつの間にか私が押し倒しているような状態で、淫らな亀甲さんは恥ずかしそうに身体を隠す。亀甲縛りされた赤い紐がチラリと見え隠れする。
「ここまで…愛のある、愛撫をされたのは…初めてだよっ…はぁ、はっ…」
「あぁ、はい…良かったですね」