第5章 第五章
そう言い走り去る浦島さんを見つめて小さく手を振り、チラリと長曽祢さんを見上げた。彼は少し申し訳なさそうに見下ろして来る。
「主、俺はお邪魔だったか?」
「いいえ、寧ろ助かりました…あのまま行くと婚約させられていたかも知れませんので」
「婚約か…長曽祢兄ちゃんと呼ばれるのも中々悪くないかも知れないな」
「ちょっ、長曽祢さんまで勘弁して下さいよ…流石に笑えませんって」
表情が引きつる私に、豪快に笑い飛ばす長曽祢さんに私も少し呆れ気味に笑った。大広間に行くと長曽祢さんに伝えれば、丁度彼も行く途中だった事を聞き一緒に行こうかという話しになった。大広間へ足を進める、近づくにつれて朝早く見た光景がフラッシュバックする。寝てしまった刀剣男士と転がる酒瓶や酒壺である、確か昨日は割れたモノもあっただろうから気を付けないと行けないなと足元を見下ろした。
「これはまた派手にやらかしたなぁ…」
「大惨事ですね…あの長曽祢さん。大変申し訳ないんですけど少し手伝って下さいませんか?」
「あんたの命令だ、素直に従うが…主も気を付けろよ」
「はい、なんとか頑張ります…」
気を付けろという意味はなんとなく察した私は長曽祢さんと一緒に酒壺や酒瓶を廊下に移し、酒やタバコ、煙管だろうの臭いが鼻につき気持ち悪くなりそうだった為、全ての襖を開けて換気を行った。
「ぅっ…あるじ、か?」
「おはようございます…日本号さん。随分お酒を楽しんだ見たいですね?」
「まぁな…もう朝か?」
「はい、今日もいい天気ですよ?」
一体どれだけ飲んだのかは分からないが、眠そうに私を見上げて来た日本号さんが昨日とのギャップがあり可愛らしくて小さく笑ってしまった。朝だから起きて下さいと伝えてからなんとか起きて貰い、顔を洗って来て下さいと笑う。
「主…もう少しばかり寝かせてくれねぇか?」
「駄目です。朝食は食べて貰わないと…それからなら寝てもいいですよ?」
「うぅ主…それはそれでどうなんだ?」
少し気持ち悪そうに表情を曇らせた日本号さんは私の揺るがない言葉にため息をついて洗面所まで歩いて行った。他の刀剣男士も起こす、気持ち悪いと口元を押さえる刀がいれば水と容器のボウルを持って来ては背中を擦り介抱する。なんか飲み会に参加したは良いが上司を介抱する会社員だった頃の自分と変わらないんじゃないだろうかとうっすら考えてしまった。