第5章 第五章
「ごめんなさい、遅くなりました!」
「あぁ、主…長谷部くんと話しはもういいのかい?」
「はい、大丈夫です。それに助っ人で長谷部さんをお呼びしました!」
ひょっこりと顔を出した私は、長谷部さんと一緒に台所へ入って行く。目を丸くした歌仙さんは笑顔で私と長谷部さんを見つめてから頷く。
「本当かい、それは助かる…皿を数十枚大広間に運んでくれるかな?まだ寝ている彼等も起こしてくれると助かるんだが…」
「分かりました、それじゃあ長谷部さんは皿の準備をお願いします。私は酔い潰れた方達を叩き起こして、酒壺や酒瓶などを片付けないといけませんので…」
「いえ、主はなにもなさらないで下さい…二日酔いの刀に巻き込まれても困りますし」
長谷部さんは私を見下ろして渋る。しかし私は左右に首を振り大丈夫だと笑って見せた。これくらいしか今の私に出来る事がないからだ、それに笑顔で生きて帰って来て、今日のご飯や酒は美味しいと言われたい。待っている私や、この本丸に帰って来られて良かったと思われたいのである。
「今から忙しいですよ!頑張りましょう!」
「主!なにかあれば俺を直ぐに呼んで下さい!全ての仕事を放り出してでもそちらへ向かわせて頂きます!」
心配症だなと笑う私ははいと頷いて、台所から出て行った。大広間に向かう途中で名を呼ばれ、振り返れば金色の着物を身にまといピンク色の長い髪が視界に入った。
「蜂須賀さん、おはようございます」
「主は、朝から元気だね?」
「はい!皆さんに私の笑顔や声を見て聞いて貰い、少しでも安らぎを与えられたらと思いまして…と言っても私の顔は平凡人なので安らぐかどうかは不明ですが」
私が笑ったのを見て、蜂須賀さんも笑顔で見下ろして来る。そっと頭を撫でられて戸惑う私に彼の表情はとても晴れやかであり穏やかでもあった。
「あぁ…ごめん、主が余りにも可愛かったから」
「可愛いですか…弟さんと重なりました?」
「浦島虎徹とかい?いや…主はそんな感じではないかな?妹に欲しいとは思うけど…」
「私を妹にですか?ふふっ…蜂須賀さん見たいな綺麗で美人なお兄さんだったら絶対周りに自慢してしまいそうですね?」
「主が構わないなら俺は構わないよ、なんだったら蜂須賀兄ちゃんとでも呼んで見るかい?」
「いいですね…」
ほのぼのとした会話をし、二人で笑っているとバタバタと走って来た一振りがいた。