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幸せになりたい!『刀剣乱舞』

第5章 第五章


「あの…終わりましたか?」
「っ、はい…申し訳、ありませんでした…」
「いや、長谷部さんは悪くないです…変な声を出した私が悪いので」
「いいえ、理由はともあれ俺が主を穢してしまい…」

真っ赤にした顔でうつむいて私から視線を反らし、悶えている長谷部さんの声を聞く。止めてくれ!穢すとかいわないでよ!いたたまれないからさ!と考えて両手で顔を覆い隠し天を仰いだ。そう彼はなにも悪くないのである、ただ一言言えるならクリーム塗るだけにどんだけ時間かかってんの?と言いたくなった。ワザとか、嫌がらせか。と言いたくもなったがぐっと我慢を決め込む。わざとらしく咳き込む私は立ち上がると鏡を見たくなった為寝室から出て行く。不思議な事にこの部屋は鏡がないのである、元女審神者の夏栄(かえ)が鏡を見る事が嫌だったのかは分からないが…兎に角鏡の量が少ない。私が歩いて行く為、長谷部さんも私の後ろに着いて来た。廊下を歩き鏡を探し出して見つめれば全く見えなかった、寧ろ私の肌が余計綺麗になっていた。

「長谷部さん」
「お気に召さなかったですか?」
「いえ、寧ろ綺麗になっていて驚いています…良くこの歯型を消せましたね?」

そっと首筋を撫でてから長谷部さんを振り返ると、先ほどの事を思い出したのかバッと顔を背けている。もう綺麗さっぱり忘れてくれた方がありがたいのだが…中々忘れてはくれないだろうと思う。

「長谷部さん、命令です」
「!はい、主のご命令とあらば…」

私の前で片膝を付いた彼を見下ろして伝える。私が真面目な表情で命令だと呟いたからか、長谷部さんは忠犬のように私の言葉を待っていた。

「今直ぐに忘れろ、いいですか。大事な事ですからもう一度言います…今直ぐ頭の中からさっきまで行われていた行為を全て消去しなさい、分かりましたか?」
「……ぜ、善処致します」

善処じゃなくてはいでしょうが!そこは逃げるな!はいと頷いてくれさえすれば、全て丸く収まるというのに!そう怒りたくもなったが、真面目で堅物そうな彼に言った所で余計悩ませてしまいそうになったから私は下唇を噛み締めて止めた。

「ふぅ…よし!長谷部さん、朝食の準備を一緒にお願いします。お二人だけじゃ大変だろうと思いますし」
「かしこまりました、お供致します」

首筋に視線を感じるが、私はあえて無視を決め込む。どうしてこうなってしまったのだと首筋が傷んだ
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