第4章 第四章
歌仙さんの言葉に少しばかりショックを受ける私は気を取り直して卵を使った料理に励む。
「ちなみに主、他にはどんな卵料理が出来るんだい?」
「他ですか?そうですねー…スープ系も卵だとまた味が違って美味しいですし。蒸し器があれば、茶碗蒸しとか。冷やせばプリンとか。ケーキ系も作れますけど…」
「それなら味噌汁じゃなく、卵スープにするかい?」
えっ、いや…そうしてしまうと全部卵じゃない?大半が黄色になってしまうけど、いいのだろうかと内心焦る私に料理をする二人に火をつけてしまったのか、味噌汁や魚も止めてしまい卵料理に勤しんで行った。
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「主!主はここにいるか!」
「あっ、長谷部さん…おはようございます。どうなさいました?」
水道で手を洗った私はタオルで手を拭いて、声のする方に向かう。血相を変えて走っていた長谷部さんは台所につき、私の顔を見るやいなや大きくため息をはいていた。そして私の両肩を掴むとほっと安堵の息を漏らした。
「良かったです。俺はてっきり主がいなくなってしまったのかと…」
「それはまたごめんなさい。一言言えば良かったですね?長谷部さんは私を起こしに来て下さって、姿が見えなかったから…わざわざ汗だくになるまで探し回ってくれた見たいですね?」
「いいえ、当然の事をしたまでです。主命とあらば何でもこなしますよ」
長谷部さんはそう言い、私は彼の頬に布ハンカチを当てる。ありがとうございます…と感謝の気持ちを伝えれば、顔を背けて頬が赤く染まった。
「時に主。その首は…一体」
「えっ…」
「まるで、なにかに噛まれたような…」
「これは…えっと…」
「………主、少々お待ち下さい。俺は今大事な用事を思い出しました」
にこりと微笑みながらも私から顔を背けた瞬間、ギラリとつり目が光った…これは不味い。私は直ぐに直感した。これは駄目だ、絶対に誰構わずに圧し切るつもりだろうと思う。私は長谷部さんの手首を掴む、行くなと伝えて、すると振り向き私を見下ろした長谷部さんは笑っているが目の奥が笑っていなかった。長谷部さんが怖い。
「あの、大丈夫ですよ?ちょっと噛まれたくらいですから…」
「噛まれたと、認めるのですね?」
「いやまぁ…そうなんだけど。別に私は気にしてないし…」
「主が気にせずとも俺が気にします!」
主命と考える一振りはやはり違う。慕ってくれるのは嬉しいけれど…