第4章 第四章
穏やかに笑う卯月(うずき)と私。けれどどこか申し訳なさげに見ている彼は『すまない…』と小さく謝罪をしていたが私は気付いてあげられなくて、結局私が審神者になると決心してから彼と元女審神者で友人であった夏栄(かえ)は結婚する事になっていた。
「ぅ、ずき…」
「あぁ、可哀想なぬしさま…心配及びませぬ。この小狐めがご一緒しておりますゆえ。ご安心してお休み下さいませ…」
そう小狐丸は彼女の泣いている頬を撫でてから、頭にそっと触れるだけのキスを落とした。
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目が覚めると小狐丸さんはいなくなっていた。元の部屋に戻ったのだろうかと辺りを見渡してぬくぬくと温かい布団から起き上がる。少し肌寒くぶるりと震えた。今の時間は6時頃であり、服を着替えた私はそっと寝室から出て行った。洗面所で顔を洗い終えて台所まで向かう。今の私に出来る事は朝食の手伝いをする事しかなかった。
「おはようございます。燭台切さん、歌仙さん」
「!…主、おはよう。もう起きたのかい?早いね?」
「お二人こそ…いつもこの時間には起きているんですね?」
「あぁ。この本丸は刀が多い…早起きをしないと朝食に間に合わなくてね」
「それではなにかお手伝い出来る事はありませんか?」
「手伝いか…それなら卵焼き作ってくれる?味噌汁は歌仙くんがしてくれるから、僕は魚を焼いておくよ」
「昨日のお浸しと漬け物の残りがまだ冷蔵庫にあったな。それを今日使おうか」
テキパキと調理を開始する燭台切さんと歌仙さんを見つめて、ザルに入った大量の卵を見下ろしながら一体何人分作るのだろうと苦笑いした。卵を割入れて砂糖と醤油を加えてから卵焼きを作って行く。もともと元の世界では料理を作ったり、お菓子作りをするのも好きだった私は沢山の卵を使い卵焼きを作った。流石に卵焼きだけでは飽きるのではないかと思い、スクランブルエッグや目玉焼きも作った。その予想外な私の手際の良さに二人は両方からじっと見下ろして来る。
「あー…食べますか?」
「いいのかい?」
「はい、構いませんよ?」
ふっくらと半熟に焼きあがった卵焼きが入った皿を持ち上げてどうぞと二人に進める。箸を持った二人は口に入れた瞬間とても驚いていた、そんなに私が料理を出来る事が意外だっただろうかと苦笑いする。
「主、凄く美味しいよ!」
「意外だったな、君にはこんなにも素晴らしい才能があるなんて…」