第1章 第一章
白衣を羽織る男の子と、可愛らしい女の子のような男の子が前に踏み出していち兄と呼ばれる男性を庇っていた。私はぱちぱちと瞬きさせてにっこりと微笑む、後ろには泣きそうで頭を下げていた男の子達がいて、私は血で汚れていない方の手でおいで、おいでと軽く手招きした。ビクッと肩が震えて見えたがいち兄というお兄さんだろう人を守る為にゆっくり近付いて私の近くで正座をする。小さな虎が私を見上げ唸る、私は白い髪の男の子の髪をそっと撫でた。
「大丈夫…刀解はしないよ。彼が悪い訳じゃないしね?私が自分で彼の大事な刀を握り締めてしまったから。まぁ…あれだ、自業自得ってやつだよ」
「あっ…あるじさまは…」
「んっ?」
「いえ、な…なんでも…ありません!」
恥ずかしそうに視線をそらしながらも、撫でられて気持ちよさげに目を細めた男の子にキュンとする。こういう可愛げのある息子とか欲しかったな…あぁ、結婚したかった。幸せになりたかった。
「あははっ…」
「…ちょっ、なに泣いてんのさ!?」
ギョッとした顔で私を見つめる美人な花魁のような雰囲気をもつ男性はあわあわとして見えた。隣では似ている兄弟だろう大柄な男性は私にそっと布を渡してくれる。ぼろぼろと子供のように泣き始めた私にはとても優しい心遣いにまた涙が溢れた。手が痛いし、心は痛いし…自分自身でびっくりだが、私は情緒不安定なのだろうか。そう言えば審神者になる前、友人達に酷く心配された気がした。笑顔で大丈夫だと伝えていた時は、涙など全く流していなかったというのに…どうして今なのだろうか。
「使って下さい、主」
「いや…先ずは手当てだろう!包帯と消毒液を!少々お待ち下さい、主!」
大柄な男性から布ハンカチを貸して貰い、顔を覆う。紫色のカソックが揺れて飛び出すように和室から出て行った男性を少し目に追う。すると頭によしよしと優しく撫でてくれた誰かがいた。紅いマニキュアが視界に入る、手慣れていない様子で撫でられてむず痒く恥ずかしくなるが心が温かくなった。
「主、可愛い顔台無しだよ…後で俺に化粧させて。絶対可愛くしてあげる」
「はいはーい!それ…アタシにもさせて?あんたを振ったっていう男見返してやろうじゃない!泣き言なら聞くよ?まぁ、先ずは一杯アタシとどう?」
本当になんだこれ。さっきまでの暗い雰囲気が嘘のように私を慰める刀剣男士にほんの少し幸せを感じた