第3章 第三章
「なーに、いいさ!また俺を楽しませてくれるかな!」
「えっと…私で遊ぶのは勘弁して下さい。他なら付き合いますが…」
「あるじさまがきてくれないのはざんねんです…だからあるじさま!ぼくともいっしょにあそんでくださいね!」
今剣くんの言葉にきゅん…とくる。勿論といい大きく頷けば嬉しそうに手を振り、岩融さんの上へ肩車で乗って歩き去って行った。私はゆっくり立ち上がると二人を見上げる。天井に頭が付きそうだ、気を付けて歩いて行ってね?と内心あわあわさせて挙動不審にいなくなるまで見つめていれば、そんな私をくすりと小さく笑っている男性が一人いた。
「良かった、もう悲しそうな顔はしていないね?朝は泣いていたから少し気になっていたんだ」
「うっ。本当にすみません…お見苦しい姿を晒しまして…」
「いや…思い詰めるのは良くないからね、穏やかに笑えるならそれがいい」
「…石切丸さんは宴には参加なさらないんですか?」
彼からは安心出来る香のようないい香りしかせず、酒の匂いはしなかった為聞いて見た。すると石切丸さんは幣(ぬさ)を取り出して左・右・左と順番に振った。
「先程、加持祈祷の途中だったんだが…近付くにつれ主の叫び声が大きくなるから抜け出して来たんだよ」
「!!本当になにからなにまですみませんでした!」
「いや…別に怒ってはいないさ。ただ朝から君の周りに良くない気が漂っていたから、気にしていたんだよ。姿を拝見出来て良かった…」
微笑み伝えて来る石切丸さんの言葉にじんじんと胸が熱くなる。優しく頼りがいがあり、見守り諭すような雰囲気をもつ彼は正しくお父さんじゃないだろうかと思う。このままでは無意識にパパと呼んでしまいそうだと内心首を振った。
「それでは石切丸さんは…また加持祈祷に励むおつもりですか?」
「そのつもりなんだけど…傍にいて欲しいかい?」
「えっ…」
私の身長まで屈んだ石切丸さんは私の頬に触れて目を細めた。彼曰く私の顔にそう書いてあったという、そんな事はないだろうと思うが…そんなに私は顔に出やすいのだろうかと考える、一瞬だけ焦るも落ち着いて彼を見上げて笑う。
「顔にそう書いてあるならすみません。本当は一緒に語り合いたい所なのですが、まだここに来たばかりなので分からない事だらけですし皆さんにこれ以上足を引っ張りたくはありません…なので私は今から勉強に励みたいと思います」