第3章 第三章
石切丸さんはきょとんとした顔をすれば、頷かれて軽く幣を左・右・左へ振るわせて「祓い給え、清め給え…」と呟き会釈をした彼は私を見つめて微笑む。
「厄落としをさせて貰ったよ。主、余りご無体なさらぬように…いいね?」
「!…はい、ありがとうございます」
私も頭を下げて微笑み、今から仕事をしようと執務室である部屋まで足を進めた。
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先ずは出陣メンバーを決めないといけないなと考えて、歩きながらスマホのように透明な画面をタップする。そんな時前を全く見ていなかった私はドンッとなにかに当たった。反動で尻餅を付きそうになった私の手首を掴み支えてくれたのは、酒でほろ酔いの日本号さんだった。
「あんたも飲みに来たのか?」
「いえ。そうではないんですけど…あのすみません、完全に前方不注意でした…」
「なーに、主が謝る事じゃねぇさ…俺も気付かずあんたに当たっちまったからおあいこ様だ」
助けて貰った為、ありがとうございますと笑えば気にすんなと少し乱暴に頭を撫でて笑う日本号さん。その時手には酒壺を持っているのが視界に入る、お酒の匂いもした為今も酒盛りの真っ最中なのは見て分かった。
「主は見たところ仕事中か、頑張るな。だが来たばかりなんだから余り無理すんなよ?」
「いえ、来たばかりだから頑張らないと駄目なんです。審神者の私が足を引っ張るなんて事したくないので…」
可愛くない回答で大変申し訳なく思いながらも、なにも知らないなんてこれからの事を考えるとやはり通用しないし、話しにならない。周りの審神者達や上の人間は私のいる本丸を下に見るだろう、刀剣男士は強いのに審神者が弱いなんて宝の持ち腐れだなんて言われたくはない。
「大丈夫です、三日の間に全て覚えますので…」
「そこまで切り詰めて仕事に取り組まなくてもいいと俺は思うけどねぇ…」
「心配してくれるのは嬉しいですけど…」
「俺は別にあんたを心配なんてしてねぇよ、あんたが倒れたらこの本丸はどうなるのかを心配してんだ」
「!…す、すみません…早とちりを、してしまいまして…」
恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。てっきり私を心配してくれて言った言葉だとばかり思っていた。けれど考えたらそうだ、私が倒れたら誰がこの本丸を見守るというのだろうか。余計に迷惑がかけてしまう所だった。
「冗談だ。俺はあんたを心配して言ってんだよ…素直になれ」