第2章 第二章
「あぁ、俺は打除けがたなびく雲に浮かび上がる三日月を思わせるところから名がきている…だから三日月宗近という」
「そうなんですか、それではあれですね…三日月さんを見つめて酒や団子を楽しむのもまた一興。違いますか?」
私は彼の唇に真っ白な団子を押し当てた。きょとんとする彼は少しばかり不貞腐れた様子で口を開き団子を食べてくれる。
「主はいいが、俺は月見は出来ないんだが…」
「あら、そんな事ありませんよ?鏡でも見ます?」
「自分を見てなにが楽しいのか、良く分からん…」
「ではこうしましょう。私の目を見て下さい…そうすれば、三日月さんが映るでしょう?これならきっと月見も出来て飽きませんよ?」
笑う私に、目を丸くさせる三日月さんは「あはははっ!」と大笑いした。とても楽しそうである。私は団子を手に取りまた食べる、その一瞬目を離した時にぐいっと近くなる距離感に目を見開く私。三日月さんはとても色っぽい表情で私の耳元で囁いた。
「なあ主、月見を楽しむのであれば…上に浮かぶ月ではなく俺を見よ」
「流石にずっとは無理ですよ…」
「…俺がそなたの瞳で月見をする事が出来んではないか」
「いやいや、上を見上げたら大きな月がありますから…そちらで月見をお願いします」
なんなら団子を全て三日月さんに備えますから、どうぞどんどん食べて下さい。と渡したくなる。うん…三日月さんが一番距離感が近い、なんなの?私はなにかに試されているのだろうかと彼の思考回路が全く読めずにいた。しかし流石に抱き締められて俺を見ろという三日月さんにちょっとだけときめいてしまったが、刀剣男士と恋愛は禁止と上からの命令で既に決定しているので…そう内心左右に首を振り、三日月さんのペースに持って行かせまいと彼の耳の奥に触れて撫でた。
「んんっ…こら、主…くすぐったいぞ」
「耳、駄目なんですか?」
「いや…分からんが、はっ…ぅ、あっ…」
うわっ…色っぽい。さっきまでグイグイ来てたのに耳が弱いのかと妙な弱点を発見した。くすぐったそうに身をよじり、少し嫌がるように私を見る三日月さんにムラッと来た。これは駄目だ…あんなに余裕綽綽といった感じで攻めて来たというのに、今は可愛いという言葉しかなくギャップ萌えとしか感じなかった。もっと意地悪させたいと思ってしまう。
「んぁ…はぁ…んんっ…あ、あるじっ…」
「三日月さん、可愛いですね…」