第2章 第二章
結局何回も違うと首を振る私の話しに聞く耳を持たず、お茶がなくなったから部屋に戻って行った鶯丸さん。その座っていた座布団を見下ろして…これは嫌がらせかな、本当は私の事が嫌いなのだろうかと考えてしまいそうになった。あぁ…温くなってもお茶は美味しいとほっと一息ついた。
+++
夜、夕食のデザートにも和菓子が添えられて出てくる。こんなにいらないと断りを入れようかと考えたが、折角貰ったモノを突き返すのはどうかと思い止めた。そして折角の真っ白な団子である、中庭から月見でも拝んで食べようかなと足を進めた。
「ほう、主か…月見団子とはまた雅で良いな」
「これはこれは…天下五剣の三日月宗近さんではありませんか。お隣どうです?」
ぽんぽんと軽く廊下を触れて見上げる。三日月さんはきょとんとさせるも目を細めて「あい、分かった」と明るい声で頷くと優雅に私の隣へ腰掛けた。ふわりと酒の匂いが鼻を掠める。
「宴でもしているんですか?」
「あぁ。今宵こちらへ訪ねて来たそなたの歓迎会というモノらしいぞ?」
「意地の悪い言い方ですね?主役が呼ばれない歓迎会なんて聞いた事がないですよ、粗方私が今日初めてここに来て、変な女とか愚痴でも言ってるんじゃないですか?」
苦い顔で団子を一口、口に入れる。あっ…ほんのり甘くて食べやすいなと思った。そんな時私を見下ろす三日月さんは小さく微笑んでいる。
「いや、鶯丸が深刻そうにそなたは売女であり…身売りをしなければならぬ程に金銭に困っていたと言っていたが?」
「ちょっ!いやいや、違いますからね!身売りとかないですから!」
「では鶯丸もたぶらかしたと?」
「なっ!」
ぎょっとする私を見つめた三日月さんは、くすくすと愉快そうに笑い喉を鳴らしていた。いやはや…本当に彼の気持ちが分からない。
「聞き捨てなりませんね…私が誰をたぶらかしたと?」
「この本丸に来て、出会った刀剣男士は主に少しばかり心を許しているように見えたからな…」
「それはまた。嬉しい事を言ってくれますね?」
「なんなら主よ、俺も絆て見るか?」
するりと私の腰に腕を回した三日月さんは、もう片方の手を私の頬に触れて撫でて来た。そのまま近づく距離、あっ…これは不味い、キスされるわと思い触れる直前に口を開いた。
「三日月さんの瞳には三日月がいるんですね」
私の言葉に、彼はピタリと静かに止まった。