第2章 第二章
「お願い、待って!違うの!」
そう弁解も空しく走り去って行った2人の後ろ姿を悲しく思いながら、気まづい空気のまま同田貫さんの身体をぽんぽんと打粉で軽く叩き終えて、長く続く廊下を歩いて行く。そんな時穏やかにお茶を楽しむ鶯丸さんの横顔が見えた。私に気が付いた鶯丸さんは、一度私に視線を向けるも直ぐに顔を反らしまた中庭を見つめ続けている。邪魔をすると悪いし通り過ぎようと思ったが、親しみやすく声を掛けてくれた。一緒にお茶をしないかというモノだった、私は鶯丸さんの隣に腰掛けるとお茶を飲みながら会話する。先程あった事を呟くように言えば、少し目を丸くさせた鶯丸さんがいた。
「辛い…完全にビッチだと思われた」
「びっち?とはなんだ」
「それを今聞きますか。そうですね…阿婆擦れとか、ふしだらな女とか、あぁ…あれですね。売女?見たいな意味合いももちます」
「ゴホッ!………主は売女なのか?」
飲んでいたお茶を吹き出しそうになっていた鶯丸さんは大きく咳き込む。怪訝そうな表情で私を上から下へ見下ろして少し考え込めば、少し悲しそうにぽつりと呟いた。そしてそっと私にお茶を注いでくれる。
「そこまでして金銭が必要だったのか…?」
「いやいや、私は元の彼氏としか付き合った事はないですからね?断じて尻軽ではないです」
緑茶を見下ろし、ふと考える。私はなぜ出会ったばかりの鶯丸さんとこんな話しをしているのだろうかと…いや、うん。別に如何わしい事なんてなに一つしていないし。気にしなくても大丈夫だと思いたいーー…いやいや、やはり可笑しいだろう。
「自分で振っておいてなんですが、私の話しは止めましょう…」
「だが…」
「いや、本当…いいんです」
鶯丸さんの表情は少し暗い、私を心配しているような表情である。なんか話しがどんどん噛み合わなくなって来ている気がする、身体を売って稼いでないからね!私は至って普通の会社員であってーー…そう伝えようと思ったのにも関わらず、鶯丸さんは私の肩に手を置き真面目な表情で口を開いた。
「ここではそんな無理をしなくてもいい。日が経てば周りもきっと受け入れてくれる」
「……いや、あの」
「俺ではなく、大包平がいてくれたら…」
oh…誰か暴走する鶯丸さんを止めてくれ。噂が広りびれがどんどん追加されて行きそうだとこのまま意識が途切れて全て夢だったらいいのにと現実に目を背けた。