第2章 第二章
「ふぁ、ぬしさまぁ…っぁ、んんっ!」
「ただ髪の毛を撫で回してくしゃくしゃしてるだけでしょうが!そんな色っぽい声で啼かない!」
私を抱き締めて小刻みに震えて見える。瞳を潤ませて頬は高潮し、薄い形のいい唇からは甘い喘ぎのような声を漏らした小狐丸さんは謝罪の言葉を口にするも、覇気がない。可愛い、小狐丸さんがとてつもなく可愛い。なんかムラムラするし、このまま犯してやろうかと邪念が溢れるもなんとか振り払った。
「小狐丸さん、そろそろ手入れに他の刀?人が集まりますから…離れて下さいませんか?」
「!はい…」
しゅん…とする小狐丸さんは名残惜しそうに離れて行った。少しばかり良心が痛む私は、小さく吐息を漏らして、小さくなっている小狐丸さんの頭をぽんぽんと撫でた。バッと私を見上げる小狐丸さんは私にまた襲い掛かる勢いである、私は急いで待て!と彼に伝えた。ぐっと待つ小狐丸さんは渋々いう事を聞いてくれる。
「小狐は待てが出来る狐でございますので…」
「うん、凄く渋々だったけどね。ってそうじゃなくて…」
「なんでございましょう?」
「また後で、沢山撫で回してあげますよ…」
「!…まことでございますか!」
しょぼくれていた獣耳のような白髪がピンッとたった。桜が乱舞する、とても嬉しそうである。むずむずと私に抱き着きたいというのは見てとれたが、我慢してと呆れて笑えば不貞腐れるように小さく頷いた。可愛い、小狐丸さんが非常に可愛い。
「はい、そろそろ皆さんが来ますから…今は出て行って下さい」
「…かしこまりました」
襖の外に出て行く時、チラリと私を見下ろす小狐丸さんは呟くように私の名というか、ぬしさまと呼んだ。私は首を傾げて彼を見上げる。ぺろりと舌なめずりした小狐丸はうっとりと目を細めて口を開く。あっ…とても嫌な予感がする。
「ぬしさまはやはりお優しい…ですが嘘はつかぬ事ですよ。狐に祟られたくなければ…」
「心配しなくてもちゃんと約束は守るよ、終わったらまた声を掛けるから…」
そんな事で祟られたくはない。そう苦笑いで聞き入れて頷く私に目を細めた小狐丸さんは長い白髪を風になびかせて出て行った。
「ふぅ…さてと、頑張ろう」
自分は出来る。大丈夫!と奮い立たせて独り言のように呟き大きく頷く。打粉を手に持ち、先っぽをよしよしと撫でる。霊力を注ぎ優しく愛情を込めてだ、その時声が聞こえた。