第2章 第二章
私の視線に気がつくように、先程よりも顔を背けて深く被り直す彼を見る。鮮やかな金髪が視界に入った、私は和泉守さんから別れるように金髪の彼を見つめて歩いて行く、警戒心の強い野良猫のように後ずさりし、今すぐにでも逃げようとする彼に近付くと下から上を見上げた。
「金髪…」
「なんだ…」
「いや…ただ羨ましいなと。とても似合ってます…」
「…それは写しの俺にお似合いだと言いたいのか」
「はっ?」
素直な気持ちを伝えただけだというのに、酷く顔を歪めた彼…山姥切国広さんがそこにいた。流石にぽかんと口を開けてしまい、数秒考え込んでしまった。反応がなかった私に鵜呑みにした山姥切さんは少しバツが悪そうに去っていこうとした為、直ぐに彼の手首を掴んだ。
「写しだとか関係ありません。私はただの山姥切国広さんに良く似合っているといいました、羨ましく思えるくらい…とても綺麗です」
「!…綺麗とか、いうな」
「えぇ、どうしてです?綺麗という言葉は…男女関係なく嬉しいとは思いますけど?」
目を細めた私は、狼狽える山姥切さんを見上げ、体を寄せると汚れた布にそっと触れて金髪を指先に絡めた。ビクッと両肩を浮かせた山姥切さんは触れるなというように私の手を振り払う。
「待って、怪我が酷いから…私に見せて」
「なぜ…」
「放置しておく訳にはいかないから、私は今日からここの主…私の命には応じて貰いますよ?」
周りを見渡して、その汚れを先ずなんとかしてから順番に手入れ部屋に来てと言い、山姥切さんの体を人差し指で触れて撫でる。ビクつかせた山姥切さんは恥ずかしそうに後ずさりした。そんなにカッコイイのに女に慣れていないのだろうかと内心ニヤニヤと笑い、もっと悪戯したくなったが欲望を止めてやめた。
「長谷部さん、手入れ部屋ってどこです?」
「…はい、こちらに」
長谷部さんに質問すれば、直ぐに返事と左側を指差していた。私は軽く会釈して感謝を述べると歩いて行く、その時チラリと後ろを振り返って口元に狐を描いた。しかし目は笑ってはいない。
「さてと。私は手入れ部屋で皆さんが来るのを首を長くして待っていますので…くれぐれも逃げるような真似はなさらないで下さいね?」
軽く脅すような物言いに表情が引きつる刀剣男士が見てとれたが私はなにも悪くはないと、鼻歌交じりに手入れ部屋へ向かった。
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「なにか用事でも…?」