第2章 第二章
「初めまして」
「はっ?誰だ、あんた…?」
私が皆の前に出たからか、怪訝そうに見つめて来る。数時間前にあった元主が結婚するから引き継いで私が新しく主になった事と、自己紹介を言えば長髪をなびかせて私を覗き込む一人の男性がいた。この人も新選組の羽織を身に付けている、確か沖田総司の刀である加州清光くんと大和守安定くんの知り合いと考えて…間違いでなければ。
「土方歳三…」
「!…おいおい、あんた…」
「ごめんなさい…違いましたか?私の推理的に羽織が新選組で…貴方のようなカッコイイ方なら土方歳三しかいないかなと、思ったんですけど…」
カッコイイのは認めるが、正直に言えば女のカンである。軽い気持ちで沖田総司の刀がいるなら土方歳三の刀もいるんじゃない?という言葉で発した。それに私のイメージ的にも土方歳三ってこんな感じなのかも知れないなと思えたからだ。ふるふると小刻みに震える男性にまさか間違えただろうかと笑顔が引きつるが、私の両肩に手を置いて真っ直ぐ射抜くように見下ろされる。あっ…桜が舞った。
「あんた、良く分かってんじゃねぇか!そう!オレが土方歳三が使っていた刀、和泉守兼定だ…かっこよくて強い!最近流行りの刀だぜ」
「あぁ兼さん。嬉しいのは分かるけど主さんの顔、凄く引きつってるから…」
和泉守兼定さんは私の両肩をバシバシと軽く乱暴に叩きながら、興奮したように話し始める。とても嬉しそうだが肩が地味に痛い、そんな時助け舟を出してくれたのが可愛らしいがしっかり者のような雰囲気をもつ男の子が和泉守兼定さんと私の間に割って入ってくれた。
「初めまして、僕は堀川国広と言って兼さん……和泉守兼定と同じく土方歳三が使っていた脇差です」
「そうなんですか、今日から宜しくお願い致します」
頭を下げた私に、ぱちぱちと瞬きさせる二人の視線を感じてゆっくり頭を上げると首を傾げた。なぜかとても困ったような顔をして。
「あぁ、いや…悪い」
「すみません、僕や兼さんはとても戸惑っていまして…」
「あぁ…いきなり帰って来て主が変わっていたらそれは驚きますよね」
「いや、そうじゃねぇんだ…」
じゃあなんだ。内心曖昧な言葉を濁す二人に苛立ちを感じながら首を傾げる。その時ポツリとまた別な刀剣男士が呟いた。
「あんたが元主と性格が正反対だ。周りは戸惑うだろう…」
薄汚れた布を深く被り顔を反らしていた