第5章 こぼれ落ちる(潜尚保×白布姉同僚)
「牛島君、この子鍵会社に忘れたみたいだし、御覧の通り超酔っ払ってるから後は宜しくね。」
そう言って呑みの帰りに牛島君に白布さんを預け、待たせていたタクシーに乗って帰った。私の鞄には白布さんの部屋の鍵。彼女がトイレに席を立った時、彼女の鞄から盗ったもの。ベロベロに酔っ払わせて、こんな時間に彼の部屋に預けた訳だから、きっと上手くいくだろう。上手くいってもらわなきゃ困る。人の恋路の手伝いなんて柄じゃない。どちらかというと壊したり奪ったりする方が得意だもの。彼女といる時間が長かったせいか、私にも彼女の世話焼きっていう性格が移ったのかもしれない。…いや、違うか。自分の叶わない恋心を白布さんと牛島君に押し付けて、それが叶う事で自己満足を得ようとしてるだけ。尚保と私がそういう関係になる訳ないもの。まあ、年が離れてる云々の前に尚保、恋愛とか興味無さそうだもんな。バレーに夢中になってるって事さえも信じられない位、尚保は何に関しても無頓着だから。
翌日、朝早く家を出て、鍵を届けに牛島君の家を訪ねた。
「上手くいった?」
その言葉に顔を赤くする白布さんの様子から察するに上手くいったのだろう。いいな、羨ましいな。祝福の気持ちも勿論あったけど、真っ先に抱いた感情は嫉妬だった。