第5章 こぼれ落ちる(潜尚保×白布姉同僚)
短大を卒業し、家を出た。これで尚保に会うこともなくなるし、一々尚保の存在に悩まされる事もなく済む。年を重ねる事にどんどん私好みに成長していく尚保が怖かった。傍にいたら手を出してしまいそうな自分が怖かった。その気持ちをかき消すように就職してから職場の先輩達にいい顔をし、気に入られるよう努力した。勿論、男限定。案の定、女の先輩から反感を買うし、同期からも好かれていなかった。そんな私の傍にいてくれたのが同期の白布さんだった。宮城から上京してきたという白布さんは、女子に好かれる要素皆無の私と何故かいつも一緒にいてくれて、初めての友達と呼べる存在が出来た。
「私といてもつまんないでしょ?別に一人は慣れてるし気にしなくていいよ。」
「別に東雲さんが一人だったから声掛けた訳じゃないよ?私が東雲さんと仲良くなりたかったから声掛けただけだから。」
不覚にもその言葉はずっしりと私の中に響いて、入社して四年たった今も白布さんは私の良き同僚であり友人である。
そんな彼女から受けた久しぶりの恋愛相談。五つ下の隣人にキスをされ、好きだと言われた。その隣人というのは去年の秋に弟の試合を見に行った時に引っぱたいた相手であり、弟の憧れの人だという。話を聞く限り、彼女の心も彼に傾いていたし、将来有望そうな年下の彼。彼とそういう事になる前は楽しそうにもう一人弟が出来たみたいで嬉しいと言っていたし、悩んでる所を見ると、もう答えは彼女の中で決まっているというのに、一体私になんと言葉を掛けて欲しいのだろうか。たった五つの年の差なんて可愛いもんじゃない。五つ年下といっても彼ももう大学生。立派な大人じゃないか。高校生に恋してる私なんかと比べれば可愛いもの。でも私なんか高校生の幼馴染みが好きなんだよなんて言えるわけなかった。