第14章 溢れ出すeroticism
名前が奥の部屋に足を踏み入れると
薄暗い部屋に、センスの悪いソファとローテーブルが1つ
仮面をつけた、30代前半の男が笑顔を向けている
横を見ると、バーカウンターの裏が
マジックミラーになっており
先ほど名前が座っていた場所もよく見える。
「仮面をつけていてもわかったよ、君の綺麗な顔が」
そう言いながら仮面を外した男性は
髭の似合う紳士的な色男だった。
あら、好み。名前の小さな呟きがイヤホンから流れ
レオナルドは溜息をつく
「仮面を取ってくれないか?」そういう男性の声が
先程より近くで聞こえる。
名前は、仮面を外し勧められるがままにソファに座り
男性が出すカクテルに口をつける
『ん、美味しい』
ゴクリとカクテルが喉を通る音が聞こえると
男性はニヤリと笑い
「このカクテルは特別なんだ」
甘く呟きながら、彼女の太ももにそっと手をおく
『特別?』
「そう、幸せな気分になる魔法がかかってるんだ」
名前の太ももを撫で上げながら甘い言葉を紡ぐ男の言葉に
レオナルドが慌てるも
スティーブンやザップに、ストップをかけられる
出処を聞き出すまでは、殺すことも出来ない。
名前から合図が来るまでは絶対に飛び込む
ことが出来ないのだ。
『そういえば、何だか気持ち良いかも』
ふふふ、と名前の色っぽい笑い声が響き
『もっと欲しいわ』
欲情を掻き立てる様な声が聞こえる。
「それは、教えて上げられないな」
『そうなの、残念』
『でも、もっと貴方と気持ちよくなりたかったのに』
その彼女の呟きに、
薬を作ったのは自分な事や
製造場所までもペラペラと話し
資金源は、クラブで薬をばら撒き
薬なしでは動けない女性たちを売り払ったとのこと
「でも、君はずっと僕のそばに置いておくよ」
レオナルド達のイヤホンからは、
男の胸糞悪い息遣いが聞こえる
カチカチと、名前からの合図で
奥へと駆け込むと
名前に覆いかぶさる様に男性が彼女に口付け
ている場面だった。
名前は、ゆっくりと口を離し
『せっかくの色男だったのに‥‥』
そう呟くと同時に、ボコボコと嫌な音が響き
蒸発する様に男性の身体が崩れ去り
部屋いっぱいに焦げ臭い匂いが広がった