第12章 飴と鞭
『どうしたのザップ
ご機嫌斜めじゃない』
定時になり、名前が帰り支度をしながら
ザップに声をかける
「SSなんてほっときなさいよ」
「名前さん触らぬ神になんとやらですよ」
レオナルドとチェインが名前に忠告するも
名前はカツカツとソファに座るザップに近づく
『ねえ、ザップ』
ザップの目の前に立ち止まる
『レオもチェインも気を使ってるじゃない』
何様なの?と蔑む目をしながらザップを見下ろす
「なんだよクソ女」
バチバチと睨み合う2人
「名前さんも、ザップさんもこんな所で喧嘩はやめてください」
レオが2人の間にはいると
スティーブンとチェインが小さくため息をつき
レオナルドにほっときなさいと告げる
『ザップ?』
「うるせえよ」
なんだよ、そう言いながらザップは
名前を睨みつける
表情1つ変えずに見下ろす名前に
舌打ちすると
ソファから立ち上がりザップが見おろす形になる
それでもなお強気な表情を崩さない名前に
ザップは眉間のしわを深くする
「僕はこれから仕事に行くよ」
スティーブンさんが名前に声をかける
「何時に帰れるかわからないから先に寝ててくれて構わないよ」
そういうと、名前に柔らかな視線を送り扉を出て行く
爽やかに、火に油を注ぎながら‥‥‥
『はーい。いってらっしゃい』
「‥‥‥‥‥」
ドカリと腰を下ろし座りなおすと
あからさまに視線を下に向け
タバコを吹かすザップを
名前は覗き込む様に顔を近け
『今日は飲みにこーよ?』
名前の誘いに一瞬嬉しそうに顔を上げたが
小さく咳払いしまた、仏頂面をつくる。
「いかねーよ。今日は真っ直ぐ帰んだよ」
「ヤリ部屋の女達が待ってるものね、万年発情期猿」
「一瞬嬉しそうな顔したくせに」
「おいコラ!うっせぇよテメェら」
それでもまだ機嫌の悪いザップに
名前は腕を組み目を瞑り
考える素振りを見せる
『わかった、ザップ行くよ!』
「は?俺は帰るんだよ」
行くならそいつらと行けよ、ヒラヒラと
こちらに手を振りタバコを押さえ付けて消す
『だから行くのよアンタの家』